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2019.12.05

【芝居】「『Q:A Night At The Kabuki』inspired by A Night At The Opera」野田地図

2019.11.10 19:00 [CoRich]

クィーンのアルバム「オペラ座の夜」に着想したという180分(休憩15分込)。10月の東京、大阪、福岡をめぐり再び東京芸術劇場・プレイハウスで12/11まで。

平家の男と源氏の女、壁で隔てられた二人。一度は休戦になったが傲る平家に反旗を翻し再びの戦禍の中、平家の男は名もない一兵卒として戦場に向かい、最前線の野戦病院では尼となった源氏の女が働いて再び出会うが互いに知ることなく戦争は終わり、負けた平家の男たちは寒冷地に送られ過酷な環境で命を落としていく。

源平の物語を下敷きに、ロミオとジュリエットの構図、更には日本人のシベリア抑留を思わせる史実を重ね合わせて重厚に描く物語。更に、ロミジュリの二人を若き日と年齢を重ねてからそれぞれに配しています。(松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳)

若気の至りのように出会い、惹かれ合った男女。年齢を重ねてからの二人からの視点はやや俯瞰的で、それは時に滑稽さすら持ちます。二人を隔てる二つの戦争、その中ですれ違う僅かな瞬間の積み重ねはこの二人の愛情の深さを作ります。

二人の愛情が育まれ、戦争が終わってハッピーエンドになるかと思いきやそうは行きません。極寒の地で抑留され強制労働の日々を送る男、女は忘れたわけではないけれど、手の打ちようがなく過ぎゆく時間。戦争が終わり日本が復興から成長に向かう姿と、シベリアに限らず戦争から抜け出せない人々の写し絵のようなのです。

帰国の船に乗ることもできず現地に置き去りにされた男、戻る友人に伝えた言葉。友人は女にその言葉を伝えないまま、30年も経ってしまうのです。パーティ続きで伝え忘れたと嘯くけれど、その言葉を貫く絶望ゆえに友人は伝えることができないのです。「愛するにも体力が要る」それを続けることができないほど衰弱しきっていて、もう愛していない、ということばの重さ。

30年という年月はベルリンの壁が崩れてから今年までの年月に等しく、なるほど源平を隔てる壁が崩壊してから、ということに、こちらも重ね合わせるのです。

深く、思い問題提起の物語だけれど、いっぽうでクィーンのアルバム「オペラ座の夜」にインスパイアされ、全曲を使っているという謳い文句はもちろんそうなのかもしれないけれど、あんまり物語に関係ない感じを受けるワタシです。

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