【芝居】「女友達」タカハ劇団
2019.12.6 19:30 [CoRich]
95分。7日まで空洞
義母が倒れたとの報で東京から病院に寄り夫の実家に駆けつけた女。実家にはヘルパーの女が待っているが、それは高校の頃の友達で十数年ぶりの再会だった。東京の女は高校の頃の夢を叶え広告代理店に勤めてるといい、ヘルパーの女は名古屋でしばらくアパレルの仕事していたが地元に戻っている。高校の頃、文化祭で三人で芝居をつくっていた女は二階で引きこもっているという。
地元を出て東京の代理店勤めと地元に戻って介護職になって久々に再会する女友達というコントラストで始まる序盤。勝ち負けという感じではないし職業に貴賎無しではあるけれど、引け目を感じたり見栄をはったりみたいな微妙な距離感が生まれている二人は、あからさまなマウントをとったりはしないけれど、微妙な距離感でどこかよそよそしい感じでもあって。
二人の同級生だったという女は実は義母の娘で、引きこもりになってここの二階に居る、というちょっとホラーめいた展開が面白いし、あからさまな嘘を取り繕うとするぎこちなさもそれっぽい。かつて三人は文化祭で芝居を作り、その過程で二人の会話を書き起こしていた引きこもりの女。今の二人の微妙な距離感のように「誰でも演じてる」のだから、自分の書いた会話で芝居を演じよう、と半ば脅すのもちょっとホラーめいた展開だけれど、長い時間が生んだよそよそしさを演じてる芝居に例えるおもしろさなのです。
東京のバリキャリという夢ゆえの見栄、アパレルという夢を叶えたが地元に戻り介護職パートというちょっと見下した感じ、あるいは離婚したシングルマザーと不妊治療中など、時間が経ち立場が変わり、中には女性故の難しさもあって。思わず漏れる「若ければ馬鹿にされ、歳取ってると馬鹿にされ、何これ、呪い?」という台詞が上手い。
さまざまに変わる二人に対して、親に無視されたがため、あるいは二人にメールを送っても返して貰えなかったがたためにその時間に留まり続けてしまって何も「変われなくて」引きこもった女のコントラスト。「ワタシには二人みたいなことは何もない」といい、それを「恥ずかしい」と言わしめてしまうこと。たった三人の出演者で、この奥行きと振り幅。コンパクトなマスターピースを新たに加えた作家なのです。
三人の女優が実に魅力的。 東京に住む女を演じた異儀田夏葉、代理店で働くというちょっとした見栄を張る後ろめたさの陰影の見事さ、地元で働く女を演じた高野ゆらこ、序盤の低すぎる物腰と友達だという関係になってからの対比の振り幅。引きこもりを演じた高羽彩はぎこちなさを通り越して、すぐバレる嘘から無茶振りのしすぎのキチガイじみた造型が物語をかき回し、しかしそこに至る背景をきちんと背負うのです。
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