【芝居】「月夜のファウスト」長野県芸術監督団事業
2019.10.22 13:00 [CoRich]
長野県内各地を回る「トランクシアタープロジェクト」の大千穐楽。90分。松本市安曇保育園。
錬金術を使う老人、この世のすべてを知りたいと更に寿命を手に入れたいと願う。悪魔メフィストとの契約で名声を手に入れるが、あっという間に契約の20年が経ってしまう。
安曇という文字で安曇野市方面かと思えば、松本市内。とはいえ、松本から上高地線に30分ほど揺られ新島々で上高地行きのバスに乗り換え。帰りは始発停留所でチケットを手に入れないと乗車を保証出来ないという車内アナウンスにびびりつつ(ハイシーズンではないので大丈夫でした)、渓谷の集落にある保育園の体育館での公演。なるほどポータブルなトランクシアター。
恥ずかしながらファウストを芝居でみるのは初めて、一番ワタシに近い筈の手塚治虫の著作すら読んでいないワタシです。 ゲーテのファウスト を下敷きに、老人と悪魔、下男などをコンパクトに3人芝居に仕立てています。老いて静かに人生を諦める感じとまだまださまざまなものを手に入れたいと野心を持つことと、野心がやがて慢心になり無為に時間を過ごすこと、あるいは学問を究めても何も判らないという絶望をさまざなグラデーションで描きます。
コロスケと呼ばれる下男を狂言回し(時に冷酷なのも含め)にしつつ、年老いて自分を見つめ直したり怠惰だったりという男の物語。ごく静かに自分を見つめたり、悪魔に世界中を連れ回されちょっとはしゃいだりという芝居の緩急。芝居を見慣れている観客ばかりではなく、子供も年寄りもという客席で、祝祭感に溢れるというわけでもない芝居ですが、芝居の緩急に合わせて客席が緩い雰囲気だったり、息を詰めたりという感じで一体になる新鮮な体験なのです。
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