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2019.11.14

【芝居】「コンドーム0.01」serial number

2019.10.27 19:00 [CoRich]

ex.風琴工房、2年前に描いた女性だけの性と生(つまりリプロダクティブ・ヘルス)にまつわる物語と対で。135分。10月31日までザ・スズナリ。 懸案だった薄いポリウレタンコンドームの開発チーム。研究室では日々さまざまな問題を解決する。広報、営業、開発などの老若交えて売り方を検討する「会議」が設定された。

作家が得意とする、ひとつのレパートリー、会社の開発を巡る物語。サガミオリジナルの0.01の開発譚という事実をを背景にしながら、過去のリコールを交えたクレーム・コンプラへの姿勢、ちょっと可愛らしくコンドームの基礎知識的なこと、開幕直後にはアイドル風のダンスで盛り上げます。

この開発物語を軸に、それぞれの男たちの初体験の一人語りによってごくパーソナルなものであり、多様であることを語り、コンドームの売り出しに向けて開発者、営業、社長などからなる横断チームがコンドームとは何か、あるいはセックスとは何かを話し合うという構成で物語は進みます。

男の初体験談はコミカルかあるいはマッチョなものになりがちだけれど、今作はコミカルさ含む物を交えながらも、おおむね穏やかで多様です。心から幸せな体験や友達の彼女とのスリリングな体験、あるいは愛ともちょっと違う幼なじみとの一回きりのだったり、あるいは高校教師との美しい光景、逆に使わなかったことのドラマチックさ、EDゆえに使ったことがないなど、それぞれの登場人物、たぶんあまり話さない告白を聴くことで、登場人物だれもが愛おしいのです。

セックスをめぐる様々の語り口は多様です。たとえば発情期のない人間だけがいつでも妊娠を迫られるがゆえにメスが拒否できないという構造、中絶を合法化すると望まれぬ出産が減り結果として犯罪が減るというバースコントロールなどの議論を経て、あるいは娘が経験した性被害の深刻さ、この歳になってもな浮ついた気持ち、あるいはコンドームを仕事にしてることを彼女に伝えられないことなど、多面的に語るのです。

横断チームの(物語の中での)議題の主眼である「001という薄さ」は、そこまで近いのか、あるいはこれ以上は入ってくるなというパーソナルエリアの究極なのかという視点は新鮮。16歳の誕生日に母親から受け取ったコンドームに同封された「必ずこれを使ってください、子供を受け取る資格、困るのは女、それは母親が中絶経験があるから、素敵な男の子になってください」という言葉の重さと深い気持ち。EDを告白する男に対してかけられる言葉「そんなこと云うの辛かったでしょ」という一言の優しさ。

開発者の物語であると同時にごくパーソナルなセックスを多面的に、時にあけすけに、しかし根底では優しく描く作家の、確かな一本なのです。

終演後に配られるコンドーム、物語で脚光を浴びていたポリウレタンではなく、ちょっと揶揄的に語られていた通常のラテックス版だったのは、まあご愛敬(高いしね、たぶん。)

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