【芝居】「悪魔を汚せ」鵺的
2019.9.15 19:00 [CoRich]
2016年初演作、ほとんどのキャストはそのままに再演。115分。サンモールスタジオ。
子供三人がこういう造型でこの役者によって演じることができるのは最後だろうという作家の意図で、短い間隔での再演なのだそう。 なるほど、ぎゅっとした空間で時に怒鳴り合い、妙に諦観が混じり合う物語の嫌な雰囲気はそのままにで、初演の駅前劇場に比べて間口が狭く感じるサンモールスタジオのある種の穴蔵感は、この物語の嫌な空気を何倍も濃密に感じさせる装置になっているのです。
この家の家長のような長女はずっとこの家を守り続けるという責任感ゆえか血縁、子孫について常軌を逸した拘泥。ずっと観ているうちになぜかネトウヨが思い浮かぶワタシです。その婿養子は何もしないという定款、次女はずっと苛ついて金切り声を上げ続けるストレスフルな造型、その婿養子はあくまで丁寧にあろうとする序盤から途中でキレて粗暴になるダイナミックレンジの広さ。長男はこの異常な家系を絶やさなければならないという気持ち、妻もまた遠縁でつながる血縁を知る絶望、その「嫁」はあくまで普通の人である、家族の中では観客から地続きの唯一の存在。唯一の外部の人間である会社の総務部長は仕事をきっちりこなすけれど、人として守るべきものがある、一縷の望み。
全員が苛つき怒鳴りあい、あるいは怯えている家族の中で育った子供たちは、それに反発し、あるいは諦め、あるいはそのまま受容してサイコパスに濃縮してしまったように育っているのです。家族達の酷さの中で育った子供たちはそれぞれに心をすり減らして、結果正義に思える行動すら、悲劇、さらには憎悪の連鎖を生むのです。子供たちを演じた祁答院雄貴、福永マリカ、秋月三佳は初演と引き続き、観ていて心配になるほどに(芝居としてはちゃんとケアされていると信じてるけれど)
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「『Q:A Night At The Kabuki』inspired by A Night At The Opera」野田地図(2019.12.05)
- 【芝居】「てんらんかい」天明留理子=旭堂南明 講談&ひとり芝居(2019.12.02)
- 【芝居】「瞼の母」麦の会(2019.11.24)
- 【芝居】「小田原みなとものがたり」螺旋階段(2019.11.20)
- 【芝居】「アイタクテとナリタクテ」フライングステージ(2019.11.17)
コメント