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2019.10.10

【芝居】「ミクスチュア」贅沢貧乏

2019.9.27 19:30 [CoRich]

100分。芸劇での「芸劇eyes & eyes plus 2019」の一本。

性欲がわかない男、男が怖いけれど心を許して抱きしめたい女、男女二人で暮らしている。清掃員の仕事で入っている地域センターでは週一度のヨガのレッスンに近くの大学院生やフリーター、主婦が通っている。インストラクターは居らず、声と音楽に合わせてそれぞれにしている。廻りは住宅地だが野生の動物が出没している。

行政サービスとしてのヨガを堂々と享受している台が院生や主婦といった人々、それを支えているのは生活するために働く清掃員。同居する二人は異性だがいわゆるカラダの関係は無くてそれはいいバランスなのに、突然尋ねてきた姉はいわゆる男女の関係だと誤解する息苦しさがあったりと、「生活」を細やかに描きます。対して、ヨガに通う人々の生活の場面はほぼ描かれず、暇つぶしや友達との会話のための日々。格差ともいえますが、サービスの現場と享受する人を少しばかりの悪意と優しさを持って描く舞台。

作家が用意したもう一つの仕掛けは地域センターに紛れ込む野生の生物。一般人が追い詰められるぐらいの猿な感じ。遠くにあれば可愛いし市街地に出たと聞いても他人事だけれど、目の前に現れると何か危害を加えるというわけではないのに、囲んだり果ては殺してしまう、殺してしまったのにその後始末は「清掃」の仕事だとしてしまうこと。自然や野生との境界線に暮らしているのに、そういう身勝手な人々に距離を置いたような作家の視線。その身勝手な人々に割かれるセリフの上での時間は結構長いのだけれど。清掃員の二人とヨガの人々という、表面化しないある種の対立構造を野生生物を登場させることによって、より強化してみせるのです。

正直に云えば、芸劇eyesやTPAMなどの、行政から資金をふんだんに入れた「意識高そうなアート」な演目は歳をとったからかちょい苦手なワタシです。今作は、身の回り5mでもなく、かといってあまりに俯瞰した括弧に括られたアートでもなく、地に足を付けた作家の視線は確かなのです。

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