【芝居】「旅行の話」猫の会(第24回 まつもと演劇祭)
2019.10.5 13:00 [CoRich]
三年ぶりの劇場公演、埼玉からの猫の会は、やはり三年ぶりの松本、上土劇場
高校のときの友達で温泉旅行に訪れた旅館。手違いで予約が入っておらず、大広間にたった三人で泊まることになって、学生の頃の話を酔っ払って。それぞれに年齢を重ねている男たちは、社長になったが家族と別居していたり、教師で子供が生まれたばかりだったり、長い間フリーターだったが今はコールセンターで働く男だったり。演劇部だった三人の頭に浮かんでいるのはここに居ないもう一人の男のことだった。
三つ敷かれた布団、ちゃぶ台には酒やスナック菓子など、一通り飲んだあとのまったりな時間。上土劇場はそこそこに広い舞台で、遠くを見渡しながら「畳の海」というセリフがとてもよくて、それがたとえ小さな会議室だったとしてもそれで大広間を出現させる演劇の奇跡を生むのです。温泉旅行もかっこ悪いオヤジたちの楽しさがあふれるようで楽しい。年齢を重ねそれぞれに家族や生活があって、そこには不倫の匂いや教え子に手を出してたりとか、あるいは若い部下たちとの北斗の拳や「わかりみ」という言葉のギャップなど、とめどない話。
やがて、かつて演劇部だった三人、ひいては彼らを呼び寄せたようなもう一人の思い出話。演劇に真剣で卒業後も食えてないにせよ仕事にしようともがいていたのに心を折ってしまった男のこと。三人の思い出話に出てくる修学旅行から自由を求め脱出する話はタイトルにつながるのです。生きているオジサンたちが死んでしまった同胞に想いを馳せる空間、大広間という何もない場所だからの静寂の瞬間と、やたらに明るい曲に合わせて浴衣姿で踊るコントラストが鮮やかなのです。
セリフで出て来る「ガイアの夜明け」を放映しているテレビ東京が松本では映らない、というのはまあご愛嬌。大きな問題ではありません。この三人のツアーを、あちこちで観たいと思うワタシなのです。
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