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2019.09.11

【芝居】「水曜、19時、スターバックス」さくりさく企画 (Solace-慰め-A面)

2019.8.23 20:00 [CoRich]

佐藤佐吉演劇祭中に期間限定で劇場近くに酒場をスポンサードしていた個人による劇場公演、二本立てのA面。20時開演で、短め75分が嬉しい。 APOCシアター。

カフェ。待ち合わせる男女。フランスに行きたいとため息をつく女は手話講師。習う若い男は聾者の同僚に恋をしていて習おうと思って手話を習い始めている。あとから来た女は手話に俄然興味を持ち、突然一緒に習いたいと半ば強引に教室に申し込む。このカフェで週一で教室が。

手話の技術をもつ劇作家で子育て経験があるということぐらいはワタシでも知っている作家の描いた物語。おそらくはきちんとコミュニティの中で見聞きしたことを再構成して紡ぎあげられた三人だろうと想像します。

手話講師は放送での出演経験もあってその世界では知られているけれど不倫と離婚を経て狭いコミュニティの中で居場所を失ってこの教室を開いているけれど自分を抑圧していて、大人になってからの友達が居ないと鬱々とした感じに。対する習う女は聾者の子供を抱え、夫にやっとの思いで子供を預けた僅かな時間で習いたいという熱意ゆえに、少々うざったいぐらいにぐいぐいと踏み込んで来て、友達だと言い張る。女性が抱えるさまざまな問題を、ダイナミックに変化する二人の関係性を細かく区切って描いていくのが今作の軸で面白さ。ベビーサインを訳知り顔で言わないで欲しいとか、友達なのか受け入れるのかの大人ゆえの迷いなど。

対象的に若い男の造形は道化のようでアクセントを与えます。イケメンでモテそうなのに伝わる言葉が欲しくて手話を習い始めるという美しさ、デートに誘うけれど「友達から」という返答が理解できずフラれたと勘違いする男を年上の女二人が全力で煽りもう一度真意を訊くべきだという中盤のドタバタが実に楽しいのです。

1時間強のコンパクトな物語だけれど、中盤で手話を交えたダンス(ジェストダンスっぽいが、明確に手話を使ったものと考えるべきか)があるなど、演技だけでなく手話のハードルは高いのでどこでも再演できるというわけではありません。が、コンパクトな座組でこの時間の濃密な物語を特有の題材で誠実に描く今作はさまざまに上演されていい一作だと思うのです。

講師を演じた加藤なぎさの自分を抑圧しているけれど自分の技術に対するプライドが凛としてカッコイイし、不倫が自分のせいだと告白するある種の恥じらいや巻き込まれるある種の弱さもきちんと。習う女を演じた斉藤麻衣子は疲弊しまくった登場から手話を手に入れ生き生きと自分を取り戻したり、それが暴走したりするバイタリティの振れ幅。習う男を演じた岸田大地はモテそうだという説得力と、相手の言葉の機微がわからないという可愛らしさのギャップ、年上の女二人に煽られ翻弄されるのも楽しい。

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