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2019.09.19

【芝居】「さなぎの教室」オフィスコットーネ

2019.9.7 14:00 [CoRich]

実際に起きた4人の女性看護師による保険金連続殺人事件をモチーフにした大竹野正典作「夜、ナク、鳥」(未見)と同様のモチーフで宮崎を舞台に描く120分。9日まで駅前劇場。

看護学校で同期だった四人の女。浮気していた夫の殺人や、夫の浮気を指摘されもみ消す依頼などを通じて再会している。首謀者となる一人がさまざまに命じ、違和感を感じながらも、支配されている。

元々は久留米で起きた事件をもとに、作家の郷里・宮崎に舞台と言葉を移して描きます。殺された夫、あるいは病死した夫、あるいは支配的な首謀者の夫に加え四人の学生時代の喫茶店のマスターを加えた8人を濃密に描きます。小説「黒い看護婦」もあるいは同じモチーフの「夜、ナク、鳥」も未見なので、それらとの違いはわからないけれど、事件そのものの概要(噂のようなものも含めて)はネットで見聞きするものにほぼ忠実なようです。

今作、公演数週間前に役者の降板があり、急遽出演となった作演・松本哲也が首謀者となる一人の女を女装で演じています。登場時の違和感はすっと薄れ、ずっと恐怖によって人々をコントロールし続ける絶対的なヒールの存在として描きます。ときおり軽口を叩いたとしても、何か舞台全体を覆う圧力のようなものが行き渡る息苦しさ。

今作では看護学校時代の四人の姿も挟まります。忙しくはあっても、希望に満ちあふれた若く眩しいころ、この瞬間の空気は緩むのだけど、それでも首謀である一人の存在は高圧的。年齢や経験を重ねた故の変貌ではなく、根っからの怪物という救いようのない描き方は、現実の物語をモチーフとするものでは珍しく感じます。一人と同性愛の関係にあるというのも、ネットの噂話ではみられますが、センセーショナルなわりに物語への関与は薄く感じます。

久々の佐藤みゆきが演じる殺人を依頼する女、おどおどした中で濃縮される耐えられ無さが切ない。吉本菜穂子が演じる独身の女、人生をどこか諦めたゆえの思い切りの良さという造型の奥深さ。夫が病死した女を演じた今藤洋子はでちあげられた夫の浮気をまだ反芻し続けるふわふわした感じがちょっと珍しい。

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