【芝居】「サラバサヨナラヨカナーン」waqu:iraz
2019.7.13 18:30 [CoRich]
女性だけで演じられる、サロメをモチーフにして女であることを語る 90分。14日まで青少年センターHIKARI。横浜港の花火の時間帯、ちょっと音は聞こえましたが、終演のタイミングには間に合わず。
- サロメ、若く美しく、父親にすら言い寄られ、それが嫌で預言者ヨカナーンに会い恋に落ち、しかし罵られフラれ、絶対にキスを奪うと誓い、父親が求める踊りと引き換えにヨカナーンの首を求め手に入れる。皿にのって出てきた首に口づけをする。「サロメって女って」
- モテる女のさ・し・す・せ・そ「上手な女の作り方」
- 女として存在したい女(関森絵美)と推してるアイドルと「女の幸せ、夢見る乙女」
- 妊娠出産、職場の他の女たちの目線、ワンオペ育児に母乳絶対という無責任な他人「I am サロメ/専業主婦」(中谷弥生)
- 「サンプリング case 12」
- ひっつめ髪で白シャツ黒パンツスニーカーの女(植浦菜保子) vsインスタ映え第一なファッショナブルな女(竹内真里) 「女として優れているのは」
- キャリア志向の女(宮﨑優里)、同期の男を超え、収入は夫よりも多く、男たちはプライドが傷つきやすい「I am サロメ / キャリア女子」
- キャリアと子持ち専業主婦、二人の「女の人生すごろく」
- かつては乱婚、一夫一妻は効率が悪いのにそうなったのは「Bar ボノボ / 酔いどれ女酒場」
- 大学の准教授(土屋咲登子)、バツイチで男をつまみ食いする日々、なんでも手に入れたい「I am サロメ / 食卓」
- 27歳平凡な女(中野志保実) 、上司が認めてくれて嬉しい vs 40歳(武井希未) 家族を知らない娘も母も経験していない興味のあることを手に入れる「I am サロメ / 居場所」
- 編集者(小林真梨恵)、食事の席がつぎつぎ取られてしまう「椅子取りゲーム / 隣の芝生は青々あおい」
- 幸せだが社会から必要とされていないかもと感じる専業主婦、子無しであることは不完全だと感じているが、時間は迫っている、とは限らない。モテていても特定の一人に求められたくもあって「Re: サンプリング case12/私たちは踊り踊る、7つぐらいのベールをまとって」
- それぞれが欲しいものを手に入れたい、手に入れる「I need」
- 短大生(松尾音音)と准教授、これからの未来、ここまでの過去。知って経験したから踏み出せなくなる、若い時の最強さ「私とワタシの会話」
- 「curtain call / prologue」
嫌な目にも怖い目にも会いながら手に入れたいものを半ば意地になって手に入れようとした「サロメ」を女と物語に登場する食事、皿をモチーフに、19歳から40歳という設定の12人の女たちの、手にしたキャリアや生活と手に入れたいもののさまざまなせめぎあいのグラデーションを描きます。骨格となるのは「I am サロメ」と題された4本など、それぞれのキャラクタの背景を描く小品。それは見た目や結婚していないこと、子供がいないこと、男に勝っていること、奔放であることなど何かが欠けていると感じる女たちの姿。「ディバイジング」と呼ぶ長い集団創作の期間を経てつくられたものらしく、それはさまざまで実にステロタイプなものもあるし、今っぽいものもあるし、あるいは程度の差があってもみんなが持っているものだったりもして。
細かい物語をスムーズにつなぐ構成は美しく、ショーケースのようにさまざまな生き方と悩みが目の前を通り過ぎるのです。ときにコミカルで情けなかったり、ときに空回りしたり、あるいはやけにツンケンといけ好かない感じなどさまざまなテイストあれど、ダンスを交えていることもあって、その全てが眩しいぐらいに生き生きと繰り広げられるのです。現在の女性たちが感じるいろんな圧力へ耐えたり抗ったり打ち破ろうとする力の力強さゆえなのだけど、よく考えると、言っていること自体がそう斬新に新しいわけではなく、つまりは社会の変化があまりにも遅いという現実に愕然とするのです。
妊娠出産のタイムリミット感をジリジリと焦らせるリズムの緊迫感をまとう「〜7つぐらいのベールをまとって」はもちろん多くの芝居で描かれる感覚だけれど、その先、閉経に至っても女でありつづけそれは一生続くのだときちんと向き合って宣言まで言い切る力強さが実に格好いい。 「I need」は皿とライトで食事をモチーフにしたダンスというかインスタレーションというか。向き合う俳優たちが並び舞台を斜めに一列になるシーン、コの字型の客席の角にたまたま座ったワタシからはそれが一直線に見え、ライトが手前から消され、奥に残るというシーンが実に美しく強烈な印象なのです。あるいは皿と洋服で人形のような二人を演じる「女の人生すごろく」はステロタイプでコミカルで楽しい。
去年の二本立てのひとつ「Closet」(1)から地続きで女たちを描く今作、必ずしも対立の構造ではなくて、いろんな生き方をありのままに、という今作、現在の女性たちの感覚を瑞々しく切り取っていると感じるワタシです。
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