【芝居】「機械と音楽」serial number
2019.6.16 15:00 [CoRich]
風琴工房時代に二度の上演( 1 )、serial numberとなってパワーアップされた三演。140分。18日まで吉祥寺シアター。
モスクワで建築を学ぶ男。共産主義の体現のため、直線や円を多用したロシア構成主義で突出した才能で多くのデザインや模型を発表していく。同僚の女性や数学の才能に秀でた友人たちそれぞれ建築を志していく。共産主義の変容とともに、求められる建築の姿も変わっていく。
実在の建築家・イワン・レオニドフを主役に、周囲の同僚や先人達、共産主義を理想と信じ、その体現のためのロシア構成主義の中心となった人々を追いながらロシア革命の高まりとそれがスターリンの体制により変容する中での戸惑いを描きます。ワタシにとってそれほど馴染みのある題材ではなく、決して希望に満ちた明るい物語というわけでもないのですが、しかし、緩急のつけかた、舞台の美しさなど圧倒的な魅力を放つ舞台に。
2008年の上演では孤高の天才の物語と感じたワタシですが、今作は周りの人物の描写が変わったのか、あるいは役者の多様さゆえか、この時代の変容と理想に翻弄される人々の群像を描くようになったと感じるワタシです。
直線と円、力学的な意味のある線を一本一本引くことが、美しい建築物につながるという理想。対して人々の暮らしのありかたを極限まで最適化しようとする共産主義の理想が相似形になっていると今更気づくワタシです。理想の共産主義の暮らしの在り方は、家族で住むのではなく、男、女、子供と機能によって別れるということと、それを実現するために都市がデザインされるという真剣さとある種の冷たさの相克となる中盤は実にワクワクするのです。あるいは詩人を独占したいと告白する女もまた同じありようで、共産化の理想と「自分を共産化できない」という苦悩と。
イントレで組まれた舞台は美しく、とりわけオープニングで大きな旗を振り派手なパフォーマンスはとても格好いい。その高揚する感じは描かれる時代の中でもっとも人々が高揚した空気感、なるほど。 天才だが不遇な建築家を演じた田島亮はきっちりと真ん中に居続ける力。同僚を演じた二人、三浦透子は(当時の)女だが力強くありたいという熱い想いあるいは詩人を独占したいという共産化できなかったという想いの複雑な人物を丁寧に。数学に強い田中穂先はコミカルさで緩急をしっかり、奥行きのある人物を造形して見応え。共産主義なのに自分の家を建てた男を演じた浅野雅博は人間臭さ、しかし心の中にあるしっかりした芯が見える力。
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