【芝居】「カケコミウッタエ」日本のラジオ
2019.5.25 19:00 [CoRich]
太宰治の「駆込み訴え」(wikipedia)をモチーフにした物語、105分。有償パンフには青空文庫版と今作両方の戯曲を掲載してボリュームがあります。2日まで三鷹市芸術文化センター・星のホール。
巻き込まれるように「健康道場」という集会。「おひかりさま」を信じ、集まった人々は自分の話を皆で聴いて自分を高めている。 物見遊山で参加している女、まきこまれるように知り合いの男もイヤイヤながら参加している。
魅力的だと思った相手に尽くし尽くしつづけたのに報われず裏切り者と呼ばれてしまったユダの独白で綴られた原作を現代の男女に置き換え、相手のことを周囲の人々がみな信奉して言葉に出しているのに、相手に対する行為も疑問も口にすることなく内面でどんどん「拗らせて」いってしまう自分の心持ちの変化を描きます。元々は一人称独白ですが、それを周囲の人々も含めた群像劇に投影するというスタイルは独特の面白さを醸すのです。
聖書に明るくないワタシです。合コン相手のヤンキー兄妹、あるいはこの男に好意を寄せている姉妹、地方議員やそれを信奉しのめりこむ男など、聖書に現れる誰かなのかはよくわからないのですが、それでも魅力的で人間臭い人々の群像劇の面白さもきちんと描かれていて楽しいのです。
最近の「星のホール」では珍しく、客席はごく緩やかな傾斜のみ。いっぽうで緞帳を半分以上下げたままで奥行きを制限し、幕の前に組み上げた舞台を使うというスタイル。天井がほんとうに高くスカスカになりがちな空間なのだけど、幕を下ろしておくというワンアイディアで密度が上がる、というのは新鮮な驚きでもあるのです。
魅力的な女を演じた宝保里実、奔放で人々を引きつける人垂らしの説得力。裏切った男を演じたフジタタイセイは久々に拝見するけれど、内面の困惑から憤り、拗らせ方など物語の芯を貫きます。ヤンキー兄妹を演じた岡野康弘・豊田可奈子はスジを通すことを何より重んじる人物をコミカルに。道場主宰を演じた安東信助の脱力したようなしかし真摯でありつづける人物なのに微妙に怪しい造形が楽しい。この道場で交わされる「やっとるか」「やっとるぞ」「がんばれよ」「よしきた。」という一連の挨拶はちょっと癖になるワタシです。
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