【芝居】「じぶんのことでせいいっぱい」菅間馬鈴薯堂
2019.5.25 15:30 [CoRich]
75分。ワンズスタジオ。戯曲が公開されており、過去作もきちんとアーカイブされています。
西日暮里駅を見下ろす公園、夜な夜な集まってダンスを練習する老若男女。そのうちの一人の老女には願いがあって、お世話になった今は亡きあの人にもう一度会いたい。神社の石をいれかえたりする言い伝えなど、いろいろ試してはいるが。終電後の駅に忍び込んで落書きをすれば出会えると信じた老女は、ある夜それを決行する。
若くはない役者も含めて激しいダンスを交えて、しかし スケッチのような小さなシーンの積み重ねます。一見バラバラで繋がりがないけれど、ダンスに集う人々、市井の冴えない人々の人間臭い姿、恋心、人への想いなどが積み上がります。これら一連のシーンとは全く異質、戦時中満州に一人行くことを決めた夫と残る妻がわずかな配給を積み立てて鶏鍋屋に向かう間の二人を描くシーンが重なります。老婆が満州で身を守るために借りられていた子供、そのひとなのだとわかるのです。
歳を重ねてもダンスで元気いっぱい、仲間もたくさん居るし、仕事も続けているけれど、人生の残りも少なくなり始めた年齢に至り、これまでの自分の人生を振り返ろうという気持ち。
あるいはこれが最後の別れかもしれないと考えた夫婦の鶏鍋屋へのみちみちち、あるいは帰国して数年ぶりに再会するふたりのことと現代。2つの時代を行き来しながら描かれる物語の奥行きの広がりがとても大きいのです。
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