【芝居】「4fish」ユニークポイント
2019.6.9 19:00 [CoRich]
75分。9日まで白子ノ劇場。
ある地域、4つの高校の演劇部教師4人。互いの作品を観た上で大会に進ませる一本を選ぶための会議。民話をもとにして創作した再演の人気作、戦争をしていたことも知らない生徒が日本の戦争を調べ物語として書き上げたもの、ラブコメっぽく面白くわかりやすいもの、ちょっと難しく敬遠されがちだけれど深いテーマを内包するものなどさまざま。それぞれの教師の思惑も混じり合って。
東西南北と付けられた高校、地元にはかつて同じように東西南北の地名を冠した高校があってという遊びも折り込み、私立校、進学校、伝統校、いわゆる底辺校という学校ごとのカラーと、それぞれの高校の作品の特性を組み合わせた四本の作品を順に生徒たちの感想と教師たちの話し合いというスタイルで進みます。どれも生徒の創作によるものでいわゆる「高校演劇」の典型っぽいいくつかのスタイルで、テキストを演じるという演劇そのものというよりは、生徒たちが歴史や社会の問題を調べ創作するという教育の側面も意識したものになっているあたりや、わかりやすいものが正義なのかということや、上演でのハプニングで生徒がどうなったかなど高校演劇にも詳しい作家のさまざまがきっちりと詰め込まれ。
これを高校生が作り、演じ、観るという物語をわかりやすく色付けされたそれぞれの高校のカラーを通して箱庭のように外から眺めて笑ってみるのは簡単です。が、それはわりと老若男女問わず、あるいは地方と東京というわけでもなく私たちの地続きの問題だとも思うのです。進学校のそれは東京でやたらと芝居を観て小難しい物語も面白がる(ふり、も含めて)ワタシに地続きだし、戦争すらも知らないけれど事実にきちんと向き合うということだったり、いわゆる伝統に乗っかって無難にやり過ごすという感覚だったり、派手でトレンディ(古いね)な物語が人気を博すということだったり。隣りにいる人々が自分と同じように世間をとらえているとは限らない、というバリエーションの今の日本の感じ。それでも、ちゃんとそれぞれに敬意を持って意見をやりとりする、ということの姿勢。人と人が向き合うということがこんなに美しく感じられる、ということはフィクションではあるけれど、現実がどれだけだめになってるかという裏返しで怖くなったりもするのです。
決して広くはない劇場、会議というシチュエーションなので仕方ないとはいえ、座ったらほぼ位置が変わらないので中央付近以外の席では顔が見づらいのは正直あるけれど、会話のという音声だけでもちゃんと面白いのは物語の力。新任の演劇部顧問を演じた古市裕貴は聞き手という立場でフラットに私たちに地続き。進学校の演劇部顧問を演じた山田愛は正しくあるべきという美しさ、融通の効かなさも含めて凛として。百周年を迎える学校の演劇部顧問を演じたナギケイスケは世俗につながる感じの気楽さ。いわゆる底辺校の演劇部顧問を演じた泉陽二はひたすら明るく、この場所でできる教育に向かい合う真摯さのキャラクタを。教師という軸があるおかげで、すくなくとも表面的には敬意をもって会話をするというフォーマットは穏やかできちんと会話ができる空間。これもなかなかできるとは限らない昨今を逆に感じ取ってしまうワタシです。
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