【芝居】「父の骨」(初期作品記録映像上映+リーディング) スタジオソルト
2019.5.31 19:30 [CoRich]
劇団旗揚げ公演(未見)の映像に役者による生のリーディングを組み合わせた企画公演。60分。31日まで神奈川県立青少年センター・ホールHIKARI。出入り口が変わり、ホワイエのように使える場所が設定されるようになりました。
三兄弟の父親が亡くなった葬儀のあと。二人きりで同居していたが引きこもりの長男にかわり、喪主をつとめた次男は水商売で働きそこそこ成功してる次男、高校を中退し清掃業をしているがもっといい仕事につきたい三男の二人は、家を出て父親とも没交渉だった。長男をサポートするボランティアの男が時々出入りしている。
父の葬儀で久々に会った三兄弟。引きこもりの長男とサポートするボランティア、そこそこ成功している次男、日々に不満のある三男という四人の男たちで描かれる物語。子どもの頃の「いじめられる側」「いじめる側」が尾を引き中年になっても引きこもったままあの頃からあまり進歩していなかったり、あるいはそれを克服したり。なんとか社会には出ているけれど学歴を得なかったことをここで後悔し選び直したいと考えたり。年齢を重ねても過去の何かが尾を引き前に進みづらい悩みや行きづらさを描く前半から、あの頃に恋心を抱いていた「まんじゅう屋のマリちゃん」が離婚し出戻って地元にいて、さらにこの家にやってくることになります。年齢を重ねて置き去りになっていたと感じていた彼らが、些細な恋心でざわつき、もしかしたらやっと前に進めるかも知れないという幕切れは、少しの希望が見え隠れするのです。「青少年」向きというよりは中年の心に届く物語。
母親を「あのヒト」と呼ぶ関係性、「はりつけ」とよばれるイジメの現場でいじめられていた長男とボランディア、いじめる側に立っていた次男というなかば捻れた関係など、60分はぎゅっと濃密な時間なのです。
初期作品を映像で映し、時に早送りしたり微妙に停止させたりしつつ、役者は手に台本を持ってはいても動きもついていて単なるアフレコにならないような工夫が楽しい。映像は決して鮮明なものではないあたりが時代を感じさせたりはしつつも、今は劇団に居ない役者の懐かしい姿を目にしたり、初演時の役者に対する「本人割」を設定し当時の役者を久々に客席で見かけたりと、勝手にワタシの中で同窓会的楽しさを感じたりもするのです。
引きこもった長男を演じた野比隆彦、ここ数作の役の広がりで楽しみに。次男を演じた浅生礼史はちょいとばかり乱暴だけどちゃんと年齢なりに成長した男の姿、じつはちょっと珍しい役と感じるワタシです。
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