【芝居】「妄想コピー / 父の声が聞こえない」螺旋階段
2019.6.8 15:00 [CoRich]
螺旋階段の過去作と新作を組み合わせて100分。9日までスタジオHIKARI。
父と仲違いし家を出て4年の男。従姉妹の結婚式で久々に家族にあったが、挨拶をした父親は声が出なくなっていてショックを受ける。「父の声が聞こえない」
人気小説家の兄弟。ヤクザをモデルにしたヒット作だが、モデルとなった男が自分だとバレると因縁をつけ、続編で全く別の人物になるようにその登場人物を書き直させようとする。男はいい人になりたい、刑事になりたいと無茶振りをする「妄想コピー」
新作となる「父〜」を先に上演。声が出なくなった父親の姿にショックを受ける息子、それでも父親が何を言おうとしているかは理解できて、結婚式では無様な「音」を出すけれど、家族の前では声を出さないという虚勢を張っていることに気づいた息子のさらなるショック。必ず自分より上にいたはずの父親が弱々しく、虚勢を張っているという事実の重さ。自分がいい歳になって親の老いにいつかは気づきショックを受けるのは誰にでもいつかは訪れるもの。落胆や仲直りをややはっきり言葉にしすぎる感じは否めないのだけれど、若い作家が若い観客に向けて(なんせ青少年センターだ)短編で描くというなかでは一つのやり方という気もします。ストレートにいい話を丁寧に描く目線の優しさ。
再演となる「妄想〜」は小説家兄弟を脅すヤクザが無茶振りの小説を書かせるけれど、それが徐々にいい人とか宇宙人とエスカレートしていく中で、小説の中の虚構と現実が溶けていく感覚。正直に言えば、起点となる「ヤクザの脅しで書いてる続編」だったり「いい人になりたいという欲求」などの設定がすぐには飲み込みづらい感じではあって、短編だからこそたぶんそれはもっとぶっ飛んで「そういう世界」を力技で押さえ込んで突っ走って欲しいところ。虚構と現実が溶けていって、居るはずのヤクザも、兄弟の兄も妄想の中の住人なのだという後半の怒涛のスリリングさが、かつてのSFショートショートのような味わい。現実の役者が演じるので妄想の中のものであることのコントラストが欲しい気はするし、前半にその不穏さが垣間見えてもいいかと思ったり、思わなかったり。口調の面白さ、短編だからこそのスピード感のあるコミカルさが持ち味なのです。
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