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2019.05.07

【芝居】「気持ちいい穴の話」きらら

2019.4.20 16:00 [CoRich]

熊本、福岡での公演を経て21日まで王子小劇場。90分。

耳かきの店。不動産で鳴らした男が流れ店長になっているがこの店に長く勤めるアルバイトの女が店のことを手ほどきする。店の事務所に住み、オーナーの女だという噂も絶えない。若くはないが歳を偽って働く女、その女を指名して店に通いつめる客。

5人のごくコンパクトな座組でほぼ出ずっぱり、箱馬というシンプルな装置という、きららのスタイルは今作でも。不動産営業を居づらくなって辞めて短期の雇われ店長として働く男、長く働く女とのバディ感、彼らに限らず、年齢が高くてもここで働く女、入れあげて通い詰める高卒資格をとろうとしている中年男など。決して裕福ではなく社会の片隅でひっそりと暮らす人々を風俗ほどあからさまでもなく、とはいえ絶妙にグレーゾーンで片隅感あふれる場所を舞台に描き出します。

不動産営業で鳴らしたが一時の雇われとして店長になり、そしてやめていく男は、派手な外の世界から一時的にこの「片隅」に降り立ついわば外の視点でワタシたち観客に繋がります。この店に出入りする人々の世界はいわば格差からなる「箱庭」で、女たちはこの世界で折り合いを付けて生きていこうという感じのいっぽう、客の男は高卒資格を取り正社員への道を手に入れようとこの箱庭から出ていこうとしているけれど、別の客を殴ってしまいます。物語では警察が呼ばれるところまででどうなったかは描かれないけれどもしかしたら箱庭から出損なってしまったのかもしれません。あるいは元の外の世界に戻っていく店長をちょっと好きだったと女が囁くのも、この世界に引き留めようというふうでもあります。

物語で明確にそう語っているわけではありませんが、現在のワタシたちの地続きに確実にある格差のコントラストを描き、しかしそこに何かを声高に言い募るわけではなくて、実に淡々とそう生きる人々が居ることを、この小さな座組のシンプルな舞台で描くことは絶妙なさじ加減なのです。

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