【芝居】「やまいだれにやまいだれ」久保と人間
2019.5.18 18:00 [CoRich]
活動休止中のクロムモリブデンの作演、アオキヒデキ名義で100分。19日までサンモールスタジオ。
夫にDVをでっち上げて離婚した女は脱獄囚を匿っている。元の夫が売れてテレビに出ているのが癪に障り、10代のアイドルとのスキャンダルを再びでっち上げようと目論む。悪いことを考えると生き生きするのだ。
犯罪をでっち上げようとする女と巻き込まれる元夫、悪いことを唆す脱獄囚、アイドルとストーカー男など、一癖どころか捻れて屈折しまくった人々。序盤こそ少々変わったぐらいの話だけれど、殺された男の網膜に残った残像で犯人がわかったり、といったぐあいに後半に向けて大量でしかもぶっ飛んだ情報が増えて世界がぱんぱんに膨らみきっていく、という世界を作り上げます。
実は脱獄囚といっていた男は再婚した夫だった、もしかしたらそれは妄想かもしれないと明確にはワタシにはわからなかったけれど、どちらにしても大人である二人が共依存しあってこの世界を作り上げているというすこし病的な、しかし哀しさも滲む構図なのです。
スキャンダルを起こすとワイドショーが殺到し、過去の配信作も配信停止、それはおかしいじゃないかというやや批判的な視線はここ数ヶ月の間にワタシも感じたこと。ちゃんと取り込むのも作家らしいのです。
必ずしも音響や照明の派手さがあるわけではないのだけれど、破綻しそうなギリギリのところを攻める物語とそれを作り上げる役者たちの力量。物語として決してすっとワタシの頭に入ってくるわけでは無いけれど、ドラッグのように癖になる、というのはまさに青木節。休止してしまった劇団だけれど、そのテイストの芝居をプロデュースし上演するということの愛情がほんとうに溢れているのです。
悪いことを考えるのが楽しい女を演じた松本紀保、人が良さそうに見えるルックスに対して考えることの酷さのギャップという面白さ。元夫を演じた村上航は汗だくで巻き込まれ困惑する感めいっぱい。アイドルを演じた國吉咲貴はこういう可愛いさ目一杯のいでたちは珍しく、それなのに喋り方がいつものとおり、ちょっともっさりというコントラストが楽しい。
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