【芝居】「背中から四十分」渡辺源四郎商店
2019.5.5 19:00 [CoRich]
2004年、弘前劇場で初演、2006年に渡辺源四郎商店で再演(未見)されたものの三演。95分。青森のあとスズナリで6日まで。
海に近いホテル、男女二人の予約だが男が先に到着し案内される。女は遅れている。窓の下は海、時間を持て余した男は女が到着するまでの間、マッサージ師を呼ぶことにする。マッサージ師は来たがフロントや女将は心配でならない。マッサージが始まる。
男は自分のことを語る。妻の実家の精肉店を継いで最初はよかったが、ショッピングセンターやコンビニが打撃となり妻も娘も去って、自殺を考えネットで知り合った女と自殺を企てた今晩、女はおそらく来ない。
マッサージ師も夫に逃げられ、マッサージを覚え稼げるようになり、あるいは客を誘いさらに稼いでいる夜に子供が溺死していて、あるいは一緒に死んでもいい、と考える。
不躾で横柄な男性客、同室の女を待つ下心っぽさなど下世話な限りの序盤。単に時間つぶしのために呼んだマッサージ師は普通に丁寧に接客だけれど、他のスタッフが尋常でない心配の限り、マッサージが始まり、男がもうここで死のうとして、しかし待っている女も多分来ないことがわかり自暴自棄になっていること、あるいはマッサージ師の女も幾多の困難を乗り越えてきたけれど子供を失った失意。もう死んでもいいという二人が密室でいる時間、少ない言葉の中の濃密さ。
死のうとしていた男がマッサージを受け、居眠りをはじめ、女は一人飛び降りようとしているところを起きた男が呼び止める終盤のシーン。男は女の背中に触れマッサージを始める、背中に人の手が触れ温めていくことで死のうとしていた気持ちが生きようとすることに切り替わる体験、明確には云わないけれどそれを女にも施そうとするこのシーンはごくシンプルで象徴的。ぞくぞくとする瞬間を創り出すのです。
男性客を演じた斎籐歩は序盤の憎たらしい横柄さが徐々に溶けていくような造形。マッサージ師を演じた三上晴佳、看板女優の彼女がこういう積み重ねた人生という説得力を得るほどの年齢になったと感慨深く、しかもこの芝居きっかけに資格まで取得して、というのがかっこいい。
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