【芝居】「フラッシュバック」チタキヨ
2019.4.14 18:30 [CoRich]
女優三人と作演の同じ歳4人組によるチタキヨの「40歳記念」を銘打っての95分。14日まで恵比寿天窓.switch。入場時にはチケット代わりにCDスリーブを模した正方形のパンフレット、サイリウムを配り、ワンドリンク制のライブハウスでの上演。
過去の芸能人に密着する番組が次に取り上げるのは20年前、一年の活動期間でシングル一枚だけを発表した三人組の女性アイドルユニットだった。俳優のために立ち上げられた小さな事務所が、時代の流れと目先の運転資金のために女優志望の三人で急ごしらえにつくりあげたものでヒットはしたものの一人のメンバーの意思によって解散していた。一人は再現ドラマ中心の売れない女優、一人はその事務所でマネージャーとなっていて、一人は結婚し専業主婦となっていた。
長い年月を積み重ね、それぞれの仕事や暮らしで自分の着地点というか到達出来る範囲がぼんやりと見えてくる40歳。かつて若くて可愛いことが重要な20年前のアイドルだったということを重ね合わせてえがきます。久しぶりではあっても濃密な時間を過ごした同志は、そのときに互いに目指していたもの、あるいは目指していた物のズレを再確認する数日間を過ごします。かつては何も持っていなくてそれゆえ自由だった女三人、40歳になり決して若いとはいえない女三人、身体の衰えや子供のこと、独り身の将来の不安。
今作はそれぞれの人生が積み上げてきたもの失ってきた物を描くばかりではありません。若い女であるゆえに性的搾取の対象となりがちだったこと、劇中、アシスタントディレクターが戯画的に言う「おじさんパラダイス」という言葉で表される、今でも若者や女性に対して理不尽な世界のままであるテレビ制作の現場を交え、あるいは子供の急病に対して仕事を諦める立場は常に母親でなければならないのか、ということなど、明確にジェンダーと #MeToo という昨今の流れに沿った視点をもってこの20年で変わったこと、変わらないことを濃密に描くのです。女の側が一方的に男を糾弾するばかりでなく、男が明確にそれを反省し謝罪するシーンも実にいいのです。
そういった「主張」は主張として織り込みつつも、一回だけのステージを適当に口パクで仕上げようとする現場に絡め手でたちむかう若いスタッフの成長譚を添え、終幕のステージでは一曲きっちりサイリウム振られる客席を前に一曲のライブというエンタメも目一杯。その後ろに流れる(当時という設定の)PVも格好良く。
物静かな事務所社長を演じた小野塚老が実にいい。若い女性の大切な一年を浪費させたと感じ、きちんと向き合う姿のりりしさ。ADを演じた福永マリカはワタシの観測範囲ではなかなか珍しいはっちゃけた、しかし現在の若い女性という立ち位置が印象的。
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