【芝居】「シャダーン!」れんげでごはん
2019.3.17 13:00 [CoRich]
80分。17日まで上土劇場(旧ピカデリーホール)。
ローカル線の踏切。踏切待ちをする男は一年前のことを後悔していた。後から現れた女は一年前ここで死んだ中学時代の友人が自殺だと信じられず、目撃者と待ち合わせていた。中学生の頃、男が面を着け、踏切が鳴る線路に入って祈りを捧げたら、電車が通らないのに遮断機が上がったのを目撃し、男は過去の決断を一年に一度この瞬間のこの行動によって選び直せるのだという瞬間を目撃したのだという。
踏切で一年前に死んだ女をめぐる人々の会話。死んだ女の友人はあまり会えなかったことで変化に気づかなかったことを悔み自殺を信じず、助けようとした男は片腕の機能を失い無職となり行動を悔み、目撃していた男は助けに入れなかったことを悔み。この三人の「後悔」を物語の軸にします。たまたまその会話に巻き込まれた撮影中の鉄オタの男、あるいは死んだ女の同僚で死の前の女の姿を知る女を置いて、死んだ女を浮かび上がらせるように描きます。その女をあえて何箇所かの場面で役者が兼ねて演じ、死んだ女を(首から名前を下げてコミカルに)描くことで、一人の人物がいろんな見え方をするプリズムのよう。
一つの決断をやり直せる「おまじない」という少々オカルトめいた奇妙な男の行動、そしてそれが成功したことで女は列車が迫る踏切に入り死に至るのです。「決断のやり直しのおまじない」が入れ子になってるのが面白いのです。 女が死んでからの一年間、止まったままだった時間が動き出すような終幕、ことさらに派手ではないけれど、地味に動き出す感じがちょっといい。
さまざまな理不尽のありかたを描くのも今作の特徴に思います。幅下かおりが演じた友人の序盤の誰かれ構わぬ噛みつきよう、あるいは加藤吉が演じた鉄道撮影のための言いたい放題、篠原誉が演じた公務員の言われ放題など、理不尽を言う側言われる側、そういうことがある、すこし嫌な感じも実は奥行きに。同僚の女を演じた中嶋美弥子のちょっと正体の見えない感じも楽しく、助けようとした男を演じた小口翔はしかし、ひたすら軽く、諦観な造形もその裏側が描かれることで深い。
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