【芝居】「ぬけがら」Nana プロデュース
2019.3.31 18:00 [CoRich]
2005年文学座で初演(未見)。ワタシは2007年の横浜未来演劇人シアターでの上演を拝見しています。120分。31日までBONBON。
母親が亡くなった数日後、認知症気味の父親と息子が暮らしている。浮気がきっかけで仕事を失った息子に、妻は離婚届へのハンコを迫っている。ある日、父親が急に若返る。
家族をつなぎ止めていた母親を亡くし、仕事も妻も何もかも亡くしてしまった男が、認知症の80歳から10歳ずつほど脱皮しながら父親が若返っていき、やがて自分よりも若くなった父親とも向き合うようになる数日間。終着点からより希望と選択肢が無限にあった若い頃に遡るという設定が絶妙で、死期が近づく父親のアルバムを遡って自分のよく知る父から若く眩しい頃に遡って「会っていく」ことで、息子自身が置かれた冴えない状況とのコントラストを少しばかり残酷に浮かび上がらせるのです。
脱皮した「ぬけがら」が散乱する一室というシュールなシチュエーションがちょっとおもしろい。アルバムの中の父親が部屋の中に浮かび息子を見守ってるようでもあるのです。セミの激しい鳴き声が去るように、父親もなくなった四十九日、心細くなり泣く男の姿は、もしかしたらこれから自分が経験することかもしれない、とずしんと重く響くのですが、それはワタシが前回拝見した12年前にはあまり感じなかったこと。ワタシの変化も感じる一本なのです。
さまざまな年代の男たちのグラデーションはちょっとコミカルですらあって味わい。男が落ち込んでいくきっかけになった浮気相手を演じた、とやまあゆみのねっとりとすがる造形はちょっと凄くて、絡み取られるよう。
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