【芝居】「喫茶ティファニー」ホエイ
2019.4.12 19:30 [CoRich]
105分、アゴラ劇場。
川の先、外国人が多く住む町。二階にあるテーブルのゲーム機がある喫茶店。ほぼ常連客。男女のカップルは元恋人で女は久々に会いにくるが男の下心とは裏腹にビジネスがしたくて、リーダの男を呼んだりするし、カップルの男も乞われて友人をよび出す。店主は入院していて身内の女店番をしている。常連の女性客は奥の部屋に入り浸っていいことが起きたようだ。初めて訪れた女は、カップルの女がしようとしていることを非難して去っていく。
久々に会えた喜びで下心めいっぱいでついてきた男と、それをあしらいつつ「売上」が欲しい女、さらには男の友人を呼び出させたり、上司を呼んだりと絵に描いたようなネズミ講勧誘の場、やる気の無さそうな喫茶店という舞台。舞台上手の別室で何かがありそうだとか下手側にずっといる常連客などゆるく、しかし不穏な空気を漂わせています。この街に外国人が多いと聞いて不安になったネズミ講の上司が周囲に外国人かどうかを訊いて廻る中盤、若い女の客にぞんざいな口をきいたことから、逆ギレした女が大昔からの生粋の日本人だと名乗るあたりで物語の節目が変わります。
いわゆる在日など日本での外国人という背景が徐々に明かされます。日本という国に在留外国人として生まれ、生きづらくいい暮らしが出来ない国だけれどかといって親の祖国にも馴染むこともできないまま、この国で暮らしていて。16歳になれば登録証の所持を強いられたり、隠すために日本名を名乗ったり、あるいは帰化を目論んで結婚しようとして反故にされたり、内定を突然取り消されたり、理不尽だらけだけれどここで暮らすしかない人々。
もう一つの外国人の立場、フィリピンとのダブル(ハーフ)の男は学校にろくに通えなかったりでも日々明るく楽しく暮らしていて、友達のススメだからとネズミ講にも気安く乗ろうとするけれど、人間関係を金に換えることに対しての突然の激昂。あるいは物語の後半では祖母がアイヌだったと大人になってから知らされた女の語り。かつては土人と言われ誰にも云えずにきた秘密を打ち明けられた戸惑い。
日本に日本人としてうまれ、いわゆる普通に暮らしてきたワタシにとっては、さまざまな物語を通して想像することしかできないことだけれど、好き好んで生まれてきたわけではない境遇で理不尽な目にあいつづけること、その閉塞感。互いを思いやる気持ちがあったりもするけれどどこか搾取しようとする関係が見え隠れしたりもする中で暮らしていく人々。さまざまな問題をショーケースのように並べて描いている感はあれど、今の日本の縮図の一つの切り口であることは間違いないのです。
下心な男を演じる尾倉ケントやフィリピンのダブルを演じた吉田庸が造型するある種の軽薄さ、ネズミ講の女を演じた中村真沙海のガツガツと上昇しようとするさまのどちらもそれゆえ置かれた立場の理不尽さをきっちり。その親を演じた山村崇子のぶっきらぼうな感じの奥にあるある種の諦観。婚約を破棄した男の兄を演じた山田百次は理不尽を与え続ける側をきっちりヒールとして演じます。ネズミ講の親を演じた斉藤祐一は薄っぺらな人物を少々コミカルに演じてみやすい。
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