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2019.03.17

【芝居】「仮面」小松台東

2019.3.9 18:00 [CoRich]

四人体制となった小松台東、少人数のキャストで通常の劇場公演とは異なるテイストを銘打つ"east"公演。70分。新宿眼科画廊地下。

元号が変わる恩赦についての説明会、講師の弁護士は到着が遅れていて人々が待っている。夫婦の二人は夫が犯した犯罪についてなのに夫は威張り散らしている。スーツ姿の男はごく丁寧で物腰が柔らかい。大雨が降ってから少し遅れてきた男は待つ人々に不躾な質問をしてたしなめられると政治家の息子でいい大学を出たのに現場仕事しかしてないとぼやく。男が気づいた向かいに座る女は元グラビアアイドルで男たちにはよく知られている。

観客もまた恩赦の説明を受けに来た参加者たち、という体裁。番号の付いたネックストラップが配られます。開演時間直後に客席で男女がちょっともめるような会話があって、観客席に座っていた役者の存在もわかって、待っている人々の会話が始まります。嫌な気分になるような不躾な会話、ときに言葉が乱暴だったりもして去りたいけれど恩赦の説明という大きな利益と外は大雨という2つの要因によって去るに去れないなかば閉じ込められた場所。

無難な会話の糸口というのが普通になるけれど、なんせ犯罪者たちだという自覚ゆえに聞くに聞けない重苦しい雰囲気で始まるけれど、遅れてきた男は無自覚にガサツな口の聞き方、頭はいいし家柄もいいのに他人への配慮を欠いて臨んだ職に就けないというサイコパス的、しかも本人は単に興味本位で恩赦を必要とはしていない人物を着火剤としてそれぞれの人物を描きます。

それぞれが犯した犯罪が何かということはなるべく隠した語り口で、むしろそれぞれの人物がどんな人かをあぶり出すのです。夫婦は夫がやたらにストレスフルで怒鳴り散らし、妻は黙って耐えつつ夫が心配でたまらないようだけれど、かつてはふたりとも役者を志しながら夫がそれを諦めたけれど妻はその道に進んでいるというアンバランスの中にあること。スーツの男はごく常識的で丁寧、食品関連の仕事できちんと仕事ができる男。客席に座る女はほとんど表情が読み取れないけれど、地元愛を持ちグラビアアイドルで傷害事件で。

それぞれの人物を描いたのち、閉じ込められた鬱憤が吹き上がる終盤、混乱の中。夫は食べる気持ちが抑えられないがゆえの食い逃げ犯、スーツの男は丁寧に見えて女に触りたがり痴漢としての姿、グラビアアイドルだった女は男を蹴り倒して暴力的だったりと、それぞれが犯した犯罪が極限状態でいちどに吹き出すのです。そういう人物たちだ、ということだけを嫌な雰囲気をまといながら丁寧というよりは事細かに描き出すという印象の物語は小さな劇場とあいまって、濃密なのです。

受付スタッフも役の一部を担うのもちょっと楽しい。

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