【イベント】「ホーム」(月いちリーディング 2019/3)劇作家協会
2019.3.2 18:00 [CoRich]
劇作家協会が定期的に開くリーディングと戯曲ブラッシュアップのディスカッション。本編85分、休憩を挟んでディスカッション。
母親は離婚していて男手ひとつで育てた父親も亡くなり、一軒家に住む姉妹。27歳の姉には恋人が居るが結婚していいか迷っている。姉の高校生の頃の同級生とは今でも行き来があり駆け出しの女優や、恋人のないままこの歳となった図書館司書などが家に集まっている。妹の友人の留学生は同居しシェアハウスとなっている。
20歳台の7人の女性だけでの上演。浮気した母親が許せない妹を主軸にしながら、この年齢になってそれぞれの立場や悩みをさまざまに描きます。不倫で会社を辞めて外国に移住した元同僚、まだ駆け出しでチャンスを得るために性的関係を迫られる女優、父親からの性的虐待の傷によって男性を信じられなくなった同級生、誰とでも寝ることで安心を得る妹、あるいは韓国に生まれイギリス人の養子となった留学生のアイデンティティなど、そう長くはない上演時間にもかかわらず、たくさんの問題点をぎゅっと詰め込んだ物語。
初演は11年前だと言います。その時点でこれだけ整理された問題を抽出して物語として仕上げたことの着眼点と力量に驚きます。反面、上演を目指すブラッシュアップやリライトを目的としたこの場では、11年を経て今の時代でどう描くかというのは、その時代に紐付いた物語だからこその難しさがある、というのはディスカッションの場でも指摘されたことでした。ここで描かれた女性たちの問題は時を経てもなお何も解決してないけれど、その見え方は少しばかりステロタイプやセンセーショナルにすぎるところがあったり違和感を感じるところがないわけではありません。ディスカッションでゲストが示したのは、たとえば「その時代のもの」として固定して描くためにどの時代の話であるかを明確にするとか、あるいは現在の視点の登場人物を一人だけでも置くとか、もちろん、すべてをその時代の目で修正し続けるという手もあるように思います。
正直にいえば、数々の人々の悩みがショールームのように次々と示されて群像劇のような感じで、少しばかり前に進む感じではあっても、問題点を並べるというところまでに力点があるように思われて、見る側には少々消化不良を感じたりもします。それぞれの登場人物でそれぞれスピンオフができそうなぐらいに山のように属性と背景を持っているのです。
ディスカッションの場では、女子高生にこれを演じさせたら面白いのではないかという観客からの指摘。20代後半を中心に置いてもなお、さまざまな形の性暴力の問題を指摘し内包するこの物語を未成年に演じさせることを「面白い」と括ることばに少し驚くワタシです。違和感なのかセンセーショナルさなのか「面白い」という言葉の真意を掘り下げようと質問を繰り返したゲストの誠実さによって議論の場としてはなんとか救われた感。また、ディスカッションの観客からの質問では若い女性の作家に対して物語から少し離れ、戯曲のブラッシュアップとは関係ないように思われる、作家自身に踏み込むような質問が少し目立ったのも気になりますが、これもなんとか司会が軌道修正をしてなかなか議論の難しさを感じたイベントではありました。
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