【芝居】「カーテンを閉じたまま」Ammo
2019.2.16 19:00 [CoRich]
2月19日までシアター風姿花伝。125分。
裁判に出廷する女の自宅。引越しで慌ただしい中、弁護士が訪ねてくる。パリに留学していた同じ時期に留学していた男がその後大統領として国を独裁した萌芽がそこにあるとにらんでいる。
インドシナからパリに留学していた人々。新たに留学してくる新入生を歓迎するためにあえてシェイクスピア劇の上演をすることして、しかしその稽古を通して自分の考える正義を徹底的に刷り込んでいく。
カンボジア完全なる共産主義国家として独裁を敷いた大統領、ポル・ポト(wikipedia)のパリ留学を舞台に、芝居の稽古を通して独裁していく過程を箱庭のように描きます。ワタシ、名前ぐらいは知っていても、ここまで徹底して国の「カーテンを閉じ」て科学も文化も断絶させてその民族から湧き上がったものだけを信じる主義だということは知りませんでした。
留学はともかく芝居の稽古があったとというのはおそらく作家の創作だろうと思います。芝居の稽古と独裁の過程を相似形だという作家の見立てがベースになっていると想像します。芝居の稽古をしているのだけれど、演出を任されたちょっと冴えない男がある企みを持って人々を動かすことをさまざま試していくこと。それが徐々に成功し、その男の企みが結実していくことを丁寧に、しかしその先にあることが徐々に見える怖さ。それは一人がカンパニーなり国を完全に掌握していく過程なのです。
初めは殆どの人が色鮮やかな服だけれど、分断され、説得され、独裁者に取り込まれ、考える事を止めると白い服になっていくという演出はわかりやすくて効果的です。
抵抗し続ける男を演じた吉村公佑はいろいろ雑だけど芯の強い人物を好演。弁護士を演じた大原研二は凛々しく敬意を持つ男で格好いい。教師(だったはず)を演じた石井舞は教養があるゆえに取り込まれるという説得力。引っ越す老女からあの頃の若い頃という両方の時代をつなぐ女を演じた前園あかり、ショールだけで鮮やかに年齢が変わるのが実に素敵なのです。
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