【芝居】「思い出せない夢のいくつか」青年団
2019.3.9 16:00 [CoRich]
平田オリザの短編を集めた企画公演・平田オリザ演劇展の一本。ワタシは初見です。70分。アゴラ劇場。
列車のボックス席。若い女とスーツの男。もう一人の女はかつて人気のあった歌手でいまはそうでもないけ れど、付き人とマネージャーの三人で旅回りをしている。女は芸能人と結婚していたが今は分かれて独身。かつてはいろいろあったけれど、続いている旅。家族でなくても一緒に居続けるとどこか似るのだろうかとか、他愛もない会話。穏やかに会話する人々だけど、何らかの関係があったりもして。
三人の役者だけれど、タバコや買い物など小さな理由で一人が席を外すシーンを挟みます。たった三人しかいないコミュニティなのに隠したいことがあるという奥行きをつくるのです。とりわけ、歌手が席を外し、マネージャーが手に持ったリンゴを若い女である付き人に押し付け、齧らせるシーン、明確に男女の関係であることが示され、それは実は隠していることかもしれない、でもきっと歌手にもわかっているだろうとも感じられる、実に色っぽいシーンなのです。
「星めぐりの歌」を付き人が歌うシーンでは、マネージャーと歌手がうたた寝している間、夢か現かの境、生死の境を描いて「大人の銀河鉄道の夜」というファンタジーが香るのです。
付き人でいつづけていてもこのままではきっと先はない、と諭す歌手、後輩を育てることも含めての自分の力量の限界を口に出して後輩である若い女に告げなければならない瞬間を迎えること、ちょっと清々しい気持ち。
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