【芝居】「接点」チーズtheater・TOKYOハンバーグ・フロアトポロジー三団体合同
2019.2.16 14:00 [CoRich]
3劇団による合同公演。それぞれの劇団のストーリーの断片を交えて上演し、ラストで緩やかに繋がるスタイルになっています。 110分。2月17日まで旧タイニイアリス、スターフィールド劇場。
SNSで繋がった二人の女性。東京の役者志望の30歳はオーディションに落ち続けている。美容師を名乗る相手と話をしたりして、励ましたり愚痴を言い合っている。役者の夢を諦める前に髪を切って欲しいと伝えると、相手は東北に住み老人ホームで受付事務をする女性で美容師は津波で亡くした娘がなりたかった職業だという。(チーズtheater)
婚約者を連れて海の見える駅にやってきた女。兄と母がペンションを営んでいる。婚約者は盲者で、苦労をかけるとわかっているのに決心できず帰ろうと言い出し、女は決めて欲しいといい少し離れる。そこへ別の男がやってくる。(TOKYOハンバーグ)
鉄道会社の父親は家を出て、母親と息子で二人で暮らしているがストレスから息子は学校に行けなくなっていた。しばらく経ち、息子は町のあちこちに現れるがそれぞれは別人のようだった。(フロアトポロジー)
テレビなどでもよく取り上げられる四国の海辺の小さな駅・愛媛県下灘駅を思わせる二つのベンチ。客席側に海があるような配置。TOKYOハンバーグの一本はこの駅を舞台にして婚約している男女の気持ちがすれ違い再び出逢うものがたり。この駅をキーにしてゆるやかに繋がりますが、じっさいのところ他の二本の物語の要請としてそれほどつよくこの場所でなければならない、というわけではありません。 チーズtheaterの一本は東京と東北、SNSで繋がる女二人、そのうちの若い一人の生まれ故郷に久しぶりに降り立つのがこの駅というラスト。フロアトポロジーの一本は、多くのストレスから人格が乖離した男の心の旅の出発点としてこの駅が描かれます。
チーズtheaterの一本は、SNSだけで繋がる女二人、東京の役者志望の若くなくなりつつある女の視点から夢を諦めるかどうかの岐路に思い悩む姿。同年齢だと思っていた相手が後半に舞台に現れずっと年上で美容師ですらなく、亡くした娘のペルソナであったことが見えてきます。リアルに会うからではないことでもっと繋がる気持ちみたいなものを描きます。
TOKYOハンバーグの一本は、女の故郷までやってきた婚約者、ここまで来て盲者だから苦労をかけると別れを切り出す男に対して、女はそれでいいといい、しかし自分で決めて欲しいと男を残し。後半では一人で居る男のところに迎えに来た女の兄があらわれ、互いが待ち人であることがわからないところから始まります。婚約者はわりと早々にそれを認識するけれど、兄は認識せずそのまま帰京かと思いきや、という実に前向きで優しくハッピーな物語。
フロアトポロジーの一本は、学校に行けなかった母子家庭の息子、しかし母親の自殺を目にした強いショックから人格がいくつにも乖離し、自分を捨てた父親だったり、成長しないままの子供だったり、年齢なりに成長した小説家志望だったりという姿を通して、男の背景や強く受けたショックをなぞります。治療のための心の旅、その出発点は鉄道で、父親が鉄道マンであること、母親が鉄道への飛び込みで自死を選んだことを重ね合わせます。乖離した性格のキャラクタがわりとびっくりするほど豹変するので、同一の役者だとははじめ気付かなくて少々混乱する私ですが、それほど大きな問題ではありません。
偶然去年下灘駅を訪れたワタシ、感じてるから解るというと少々尊大な物言いだけど、綺麗な景色と緩やかに流れる時間の雰囲気など、包み込まれるようだったり、心の拠り所だったりを重ね合わせて人々が優しくある場所、という要に持ってくるのは、いろんなスタイルの物語ではあっても、全体をふんわりと優しい気持ちで包むよう。
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