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2019.02.18

【芝居】「僕らの力で世界があと何回救えたか」タカハ劇団

2019.2.9 14:00 [CoRich]

タカハ劇団の新作。14日までB1。120分。

漁業だけが産業の過疎に悩む町。町おこしを目指し物理学研究の加速器を誘致し島に施設ができる。その開設前日、島が見える高校で「科学の町」をアピールするサイエンス祭りの準備をしている。出し物が増えずかつてあったアマチュア無線部のOBたちが呼ばれている。あの頃、仲間うちに居た男は加速器の危険性を指摘し反対運動をしていて、その声を届けるため、やっていたミニFMの番組を海上から発信することにするが、その当日、海は荒れていて、ひとりその友達は海に出て行方がわからないままだ。

舞台奥に積み上げられた学校の机。序盤はかつてあった無線部のOBたちが懐かしみ、無線部が文化祭でやってるような素人向けの出し物の相談から始まります。 アマチュア無線で青春の一時期を過ごしたワタシ。アマチュア無線をここまで丁寧に敬意を持って描いた芝居は観たことがありません。文化祭で楽しいイベントとしてFOXハンティングとか、それようの手持ち八木アンテナ、無線機の懐かしさ。東海を想定した学校の無線部(社団局)のコールサインがJA2Y~というリアリティも。

この町に招致された研究施設は莫大な金が動き、しかしブラックホールが出来てしまうかもしれないという危険性や漁業が成立しなくなるとしての反対運動。ネット以前の時代、無線がミニFMとはいえ放送という運動の強力なツールだった頃を舞台に描きます。

産業がなくなり、工場や研究所を誘致することで浮遊しようという場所、誘致するものの中には危険なものもあるけれど、そこにはそれが必要なものだという切実さ。量子物理学の研究施設の目的はブラックホールを作ることで、それは周囲に危険を及ぼす可能性があって。しかし科学の町というアピールで浮遊したい町が祭りで盛り上がるのです。科学の町での浮揚策はたとえば原発の町の雰囲気を感じ取るワタシです。 無線というノスタルジーすら感じる技術と最先端、その時代の距離もいいのです。

その施設を反対して行方不明のままの同級生たちの想いの物語。反対運動という原動力があって生徒を煽ったり、そのために必要な無線という技術とより広げたいという想いからの行動、そこから何年も経って思い出して。そこに研究施設のせいかどうか、時空が歪んで。物語の要素一つ一つ、人物の造形の一つ一つに無駄がないどころか美しく運ぶのです。見事。

反対運動を煽った教師を演じた若狭勝也は施設が完成した今は昼行灯な雰囲気、そこから急に興奮するきもちの振り幅をしっかり。首長を演じた松永玲子は強い政治家と息子への心配というこれも振り幅。その息子を演じた大久保祥太郎は行方不明の友達が好きすぎて憑依する造形がいいのです。同級生でここで教師になっている小園茉奈の憧れの女の子がそのまま成長している感じ、その同僚を演じた斉藤マッチュはあの頃に戻るようなふざけ具合のバディ感が楽しいのです。

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