【芝居】「夜が摑む」オフィスコットーネ
2019.2.2 18:00 [CoRich]
12日まで711。100分。
団地の四階に住む男。かつて近所から音の苦情を受けたことから自分の出す音にも他の家の音にも過敏になる。無職で口うるさい男は近所の人々からも煙たがられている。 階下の家族の子供がピアノを習い始め、朝から夜遅くまでピアノの音に悩まされ眠れない日々を送る。
日本で騒音を理由に起きた初めての殺人事件(wikipedia)をモチーフにしながら、そうなるに至るまで男に見えていた世界が描かれます。 アップライトのピアノに繋がったダイニングテーブル。舞台奥には5つの玄関扉。団地を模した模型はテーブルの椅子になったりもする。テーブルにはミニチュアサイズのテレビや冷蔵庫。
テーブルの上を男の一室に見立て、そこに閉じこもり神経を張り詰め、閉塞した気持ちで暮らす男。一方的に被害者というわけではなく、引っ越してきた隣人からの挨拶が遅いと激高する理不尽があったり、とっつきにくさのある人物に造型されています。優しい妻やちょっとこまっしゃくれた息子との会話で気持ちが静まったりはしながらも、近所の人々の冷たい目線と生活音によってどんどん追い詰められていくのです。
団地の同じ間取りで住む家族。ちょっと騒がしい井戸端会議、それぞれに不安はあれど誰もが同じように家族が居て、幸せな日々を暮らしていてという雛形の人々。 実は男には妻も息子も、少なくとも今は現実には一緒に住んではおらず、幻影のようにみえていることが終幕で示されます。無職で愛想のない一人暮らしの男に対しては厳しい目が注がれるのがどれほどのストレスか。孤独であり続けるテーブルの上の一部屋と、後半、テーブルの下で暮らしている雛形の家族、というシーンは、孤独と団欒があまりにも残酷に浮かび上がるのです。
長時間の逆立ちや踏み台昇降など役者に極端な肉体的負荷をかけるシーンがいくつか。聞いた話では戯曲自体にこの肉体的負荷(種目を変えた物もあるようですが)が指定されているとのこと。シリアスのまま続ける物語の中に少しコミカルに、しかも現実の役者の肉体という形で紛れ込ませてちょっと突き放す雰囲気。
孤独な男を演じた山田百次はずっと居続け、ストレスに苛まれ続けた男のいびつさをしっかり。息子を演じた塩野谷正幸はこまっしゃくれた良く出来た子供、やけに半ズボンが似合う楽しさ。半裸で現れた有薗芳記のシックスパックの腹筋の凄さに目を奪われ、一瞬意識が飛んだワタシです(笑)
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