【劇作家大会】公募短編リーディング&ブラッシュアップトーク
2019.1.27 13:00
劇作家大会 大分で「豊後国」から「豊」の一文字をテーマにしたごく短い戯曲を三本。リーディング上演を三本行い、ブラッシュアップトークを行う2時間。
絵本作家の女、ワープロに向かい子供の声に耳を傾け、黄色い渡り鳥と七色の鯨の物語を描く。夫の帰宅で作った肉オムレツはその子供のリクエスト。夫と二人きりの食卓。(日下 渚『明日は鯨に美味しいものを』)
窃盗団が忍び込んだ住宅で160万円を見つけたが、老女が独り死んでいた。金庫の中には空の封筒、三人の名前が書いてある。金は孫たちに渡す物だったのではないかと気が咎めるが(ルーシー・ラブグッドウィル『お婆ちゃんの贈りもの』)
ホームレスの暮らす公園。役所の男が通りかかり、話しをする。川向こうの再開発で景気がよく、ホームレスはそちらに移り住むものが出てきている。酔っ払いの男や家を出てきた人妻、それに恋心を抱く若い男。みな新しい生活を心に抱くが、独りこの場所に残ろうとする男が居て。(本橋浩行『ヒグラシとゆうかつ』)
「明日は~」は子供を亡くした女がそのことから逃れられないまま、夫婦ふたりきりの生活なのに夫に向き合えないまま10年が過ぎてしまった女。前半はその見えている子供たちが黄色い渡り鳥、七色の鯨をめぐる話をして、それを絵本して。後半では夫に料理を作るが、それは夫のためではなくマボロシの子供に頼まれた物を作ったのだ、と我に返り夫に向き合うことを決める、という物語。
ディスカッションではそれしても10年がちょっと時間軸として長すぎるように感じるという指摘や、子供に言われて作る肉オムレツが作られていたかどうかのわかりにくさの指摘などがありました。ゆったりした時間に見えてじつは濃密に語られる物語。私も子供を失い前向きになるという物語の骨格をディスカッションで初めて理解したので偉そうなことは云えないのですが。
「お婆ちゃん~」はルパン三世を思わせる盗賊団、イキナリ死体を前にして戸惑う泥棒たちというドタバタ。時に恋愛がまぶされていたりするものの、ディスカッションでは「泥棒に入ったらそこに死体が」というシチュエーションに圧倒的に力がある、と言う指摘。封筒に書いた名前で孫たちへのプレゼントと想いを馳せるぐらいに余裕のある泥棒たち、ということにもうちょっと人のいいという人物の説得力が欲しい気もします。
「ヒグラシ~」はホームレスというコミュニティ、そこにずっと居続ける男と、それを気遣い出て行きづらい気持ちの仲間たち。役人の同僚もそこにからんでいたりした場所、コミュニティがあるけれど終わっていく雰囲気の場所、そこに想いを残す役人の静かな物語。当初予定していた役者ではなく、トークゲストの佃典彦のサプライズ的登場、ホームレスコミュニティの主という役の奥行きが嬉しい。
3本を2時間ではあるけれど、3本のディスカッションの時間配分のバランスがあまり上手く行っておらず、5:3:2ぐらいの感じに。盛り上がった結果とはいえ、またこのセッションに限らないけれど時間が伸び気味になりがちだったのが他セッションとのハシゴでちょっと厳しいところ。
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