【芝居】「わかろうとはおもっているけど」贅沢貧乏
2019.2.15 21:30 [CoRich]
17日まで横浜・BUKATSUDO HALL、そのあと東京。70分。
同棲している男女。いつものように何もない日常が過ぎていくかに思われたが、女は自分の妊娠を告げる。突然のことに驚くが戸惑いながら祝福する男だが、女は妊娠が自分の生活も何もかも変わってしまうことに気持ちの整理が付かない。男に対して男の立場はヒトゴトにしか感じられないという。女の友達を呼んだり、なぜかメイドがいたり。
シンプルな部屋を模したようなセット。メイド姿の二人の女。一人はベテランで一人は新人という風情。お茶を入れたり片付けたりはしながらも、この部屋に住む男女とは交わらない立場にみえた序盤だけれど、妊娠をめぐる男女の戸惑いが明らかになってから、存在し、会話する相手として現れます。 妊娠をキーに、旧来の男女や家族のあり方をめぐるぐるぐるとした逡巡や迷いを描く一本。仕事はどうするのか、なんか重圧が全部自分にかかってないかという不安。妊娠に戸惑う女を中心に、対する性別としての同居する男、男性は不要だと断言する友人の女、伝統的な家族のあり方であることが正しいとするベテランメイド、一方的にそう云われながらも、彼等の姿を観ながら変わっていく新人メイド。それぞれの立場で会話し考え、変化したりあるいは意固地になったりという立場の違いが描かれます。
女の迷いに辟易するように、机の下に潜りCDらしい円盤を難しい顔をしてとっかえひっかえする男の姿は、考え会話することを拒否し閉塞する姿。男の描き方としてはたしかにスタンダードな感じではあるけれど。 妊娠した女は男に問いかけるのです。「男のあなたが産めるなら、好きな人の子供を産みたい?」男はあくまでそれはありえないと思考停止するけれど女は食い下がり、それぞれの立場からの喧噪のなか、それまでの一シーンがもう一度繰り返されます。ただ、それは男女が入れ替わったかたち、つまり男が妊娠して、という立場で。妊娠する立場でなくなった女はそれまでの男と同じように、閉じこもり、思考停止するのです。
ごく短い物語だけれど、妊娠する立場としての女性のいくつかの立場、視点を提示し、その中で気持ちが揺れ動くことの渦に、男も巻き込もうという思考実験、それに巻き込まれてワタシの頭の中もぐるぐるするようで、刺激的な時間なのです。
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