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2019.01.16

【芝居】「アトムが来た日」serial number

2018.12.28 19:30 [CoRich]

原発を巡る二つの場面を描く140分。12月29日までスズナリ。

1950年、日本に原発は必要だとして、メーカー、商社、政府が導入を画策する。同時に何カ所かで研究用原子炉のの招致が熱を帯びている。
2040年。原発の全廃が決まり廃炉のための処理施設として作られた場所、日本で最後に原子力の技術を受け継ぐ6人。そこへ官房長官一行が現れる。もう一度原子力発電を始めようという。

二つの時代を行き来して描きます。制服や眼鏡の有無で時代や役を切り替えることや、多くの専門用語があっても流し聞きすればよいことを告げる前説に続いて始まります。 一つは高度成長を支える原動力として待望されている原子力、それを心から前向きに受け入れ導入に邁進する人々。メーカーや商社、あるいは政府の公務員たちがそれぞれに知恵をしぼり、時には半ばちからづくで精度を上げていく姿。もしかしたら少々荒っぽいやり方かも知れないけれど、パワフルで前向きな人々、高度経済成長に重なる人々の姿。良くも悪くも成長を信じて疑わない明るい日々。

もう一つは福島後、廃炉が決まり原子力研究が廃炉だけに限られるようになった世界。こちらは(コミカルなシーンは数々あれど)基本的には静かでフラットで冷静さが勝るトーン。しかし、潰えようとした原子力の火をもう一度復活させようと考える官房長官の存在。 癌に画期的な治療法が見つかり放射線そのものを以前ほど危険視せずによくなったというファンタジーを交えることで、半ば思考停止になりがちな原子力発電の復活について、その可能性を考えるという一種の思考実験という意味合いも帯びるのです。なるほど。

技術者を演じた岡田達也の実直な造型、真摯に技術に向き合う人物という説得力。原子力発電の復活を目論む官房長官を演じた福本伸一は、ちょっと食わせ物な雰囲気を持ちつつも、話題に対してきちんと向き合い理解して制作を選び取ろうというある種の理想の姿。そうじゃない受け答えばかり観ている昨今、これすらファンタジーになりそうだというのは云いすぎか。

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