【芝居】「短編集 踊る阿呆に見る阿呆」空飛ぶペンギンカンパニー
2018.12.23 19:00 [CoRich]
空飛ぶペンギンカンパニーの20分ほどの短編をオムニバスで3本。 24日まで横浜・若葉町ウォーフ
自室で配信して充実する日々をいる女。配信中に突然、堕天使ガブリエルを名乗る男が現れ、受胎告知をする「ハイシンシャ」
葬儀の後。病気で亡くなった男の妻と男の弟が帰宅し一段落する。兄の暴力を疑い弟は真実を尋ねたいと考える「改稿 つぼみ」
友人の結婚式から帰宅した女の家には首輪をかけられた男が居る。会社の同僚だった男を監禁して3年が経ちその日々に互いに馴染んで居たが、結婚式であったイケメンとの再出発を目論んで男を解放しよう考える。「犬とバウムクーヘン」
日替わりの語り部がヒッチコックもしくはタモリよろしく間をつなぎながら三編の二人芝居をオムニバス形式で組み立てます。
「ハイシンシャ」はそこそこに視聴者のついた動画配信の女、イマドキっぽくわり慎ましい生活だけれど、少なくとも配信では恋人の存在や高いテンションで自己を肯定しているけれど、突如現れた男は、その女の妊娠を告げるばかりか、それが堕天使・ガブリエルゆえに処女懐妊で配信でそれまで築いてきた恋人の存在を全否定するのです。男が突然現れて危険を感じないというのは不思議な気もしますが、まあ20分の短編ゆえのデフォルメか。配信で作り上げていた虚構をいわば精神的に丸裸にされる恐怖、スマホの画面に映った自分の姿に怯えるあたりがちょっと巧い。
「~つぼみ」は兄嫁に対する弟のほのかな恋心をベースにしながらも、妻が受けて居た暴力、にもかかわらず病気の中でやっと許された一時帰宅という一瞬に賭けてでも、その子供を宿そうとした妻の心持ち。静かに語られるけれど、これは相当にハードな物語なのです。暴力を受ける側が進んで取り込まれそこから逃げ出さない、というDVの姿。ほのかな恋心を持つ弟でさえも、「乱暴なあとに優しい」という同じ血。でも妻はそれを忌み嫌うどころか、膝の上に置いた骨壺、まるでおなかの子に夫を移し替えようという風にすら見えるのです。
「犬~」はうってかわって相当にコミカルな仕上げ。女が男を監禁し3年、でも男はもう服従どころか愛情すら芽生えていて、という良く考えればこちらも状況は相当に深刻なのです。でも、この状況に女が飽きてイケメンに乗り換えよう考え反省するそぶりを見せる、みたいな軽さ、それでも犬のように尻尾を振ってこの関係を続けていきたい男のすれ違い、は出落ちに近い首輪姿とあいまって、なぜか微笑ましさすら感じて楽しめる一本なのです。
20分という時間なので、あまり込み入った事はできないけれど、シンプルに二人芝居、ちょっと深刻だったりコミカルだったりとバラエティ。どれもどこか陰な部分を抱えている、という共通点があることが、語り部の存在と併せてある種の統一感をもっているのがいいなと思うのです。
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