【芝居】「ショウジョジゴク」日本のラジオ
2019.1.20 19:00 [CoRich]
夢野久作の原作(青空文庫)にある三つの物語を緩やかに一つの世界にリミックス。70分。22日まで新宿眼科画廊。
ある開業医のもとに現れた少女は優秀な看護婦だったが紹介しようという医師はハプニングが続き会うことができない。彼女の言葉に反して会いに行くことを決めると、果たしてそこにはその医師が居て、彼女には虚言癖があると聞かされる。(何んでも無い)
医者の元に現れた男はバスの運転手だといい、女の妊娠について相談をもちかける。(殺人リレー)
仲の良い女学生の先輩後輩の女二人。火星からやってきたと名乗る先輩、教師は厳しくやさしいが、不穏な空気をまとう。
ワタシは原作未読、後から青空文庫で読みました。 原作では別々の三つの物語を骨格にして、ゆるやかに繋げながら一つの世界に作り込みます。物語全てを作り込むわけではなく、細かく切り刻んで混ぜたり、語られていない前日譚や隙間の物語を創ったりとリミックスを超えた楽しさなのです。
少し時間を置いて考えてみると、元々はわりとバラバラの視点だった三つの物語だけれど、その時代の語り口は基本的には作家が持つ男の視点なのです。 とりわけ、バスの車掌はもともと女性側の書簡だけれど、そこに登場する男性のバス運転手をとりあげ、女子高生の話も、原作での彼女たちが目撃した大人たちの汚さというより、その前に女子高生が感じた理不尽と気持ち悪さを両面から描くのです。
今作は三人の男と四人の女という構成だけれど、女たちはそこに(自然に)あるものと描かれ(ている気がする)、男たちは妄想も含めて考えすぎたのか狂気を帯びた人々と描かれます。道端に咲く花を摘んだりしそうな、そういうパワーバランスの時代の作家が書いた物語と読んだ私です。
理不尽な時代に理不尽に(しかし面白く)描かれた物語。その時代においての理不尽を働いていた男たち。運転手含めて三人の男たちは終点の精神病棟にまとめてバスで送り込まれる、という終幕。原作にはない部分で、かつての理不尽の原因の男たちをまとめて片付けてしまう、と意図的に読み取る私です。こういうリミックスを(原作者ではない)作演が行い上演できること。著作権が切れた作家の物語をさまざまに解釈して発表できるようになった、というありがたさなのです。著作権が伸びた昨今、これができづらくなるのは観る側にとっては少々辛い気がしたりしますが。また、それが昨年あたりからもりあがる#MeTooにも地続きな地平から少しばかり批判的な視線で描いているのもまた、時代への変化ということなのです。
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