【芝居】「へたくそな字たち」TOKYOハンバーグ
2018.12.08 14:00 [CoRich]
125分。12日まで座・高円寺。
天ぷら屋を営む男が娘に連れられて夜間中学への入学を決める。不登校や家庭の事情で通えなかった人々が通っている公立の夜間中学で、職人やパート主婦などいろいろな人々が居る。
実在の夜間中学を舞台に、初老の男が途中編入で通い始めた初夏から卒業式までの期間を通して「普通の」中学校ではなく夜間中学に通うざるを得ない境遇であること、しかし読み書きぐらいはできるようになりたいというそれぞれの理由だったり、読み書きができないことの恥ずかしいと思う気持ちをはねのけて通うことの意味を描きます。
モデルとなった糀谷中学校 夜間学級、下町っぽくちょっとがさつだったりするけれど、基本的には真面目に通いたいと思う気持ちを持った人々の暖かい物語。 娘にはできなかったけど孫には読み書きを教えたいと老いてから通うことを決めた天ぷら屋の男、あるいは定職につかないままだったがサイの出産を目の当たりにして進む道を決める若い女など、いくつかの物語が幹となりますが、実際のところ、びっくりするようなことはあまり起こらず、いろんな人々のあり方を描くという感じ。それは山田洋次「学校」やドラマ「3年B組〜」などの雰囲気。
子供ができた鳶の男が夜間中学に通うことを聞かれて警戒したり、わからない言葉を見つける課外授業で威勢のいいはずのトラック運転手が周りを気にして恥ずかしがったりなど、それなりに暮らしては居るけれど、読み書きが出来ないということの引け目だったり、そこまでに経験してきた嫌なことが見え隠れして人物に厚みを与えます。
国語の教師は宿題として「先生に手紙を書くこと」を課しています。自分の字で書いた手紙が郵便で相手に届き、情報が届くというごくシンプルなしかし大きな達成感。携帯・メールの昨今ではもしかしたらそこまでじゃないかもしれないけれど、舞台を1989年とすることでそれを丁寧に避けています。この宿題、終幕で「書いた文字を通して居なくなった人の気持ちを伝える」ということにもなっていて、仕掛けとしてよく効いています。 何より、読み書きが出来ることが人の「尊厳」の一つなのだのだということも印象的に迫ってくるのです。
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