【イベント】「よろしくマイマザー」(月いちリーディング 2018/12)劇作家協会
2018.12.08 18:00 [CoRich]
劇作家協会のリーディング企画。本編90分ほど。
家族経営の雀荘。元ボクサーや麻雀やたらに強い女子大生、地元のキャバクラ嬢などの常連もついている。父親の死後、母親と長女が切り盛りしてきたが、母親は時折突発的な認知症をまだらに発症するようになってきた。幼馴染の介護士や常連客たちが手伝っているがストレスは溜まっている。長女には婚約者がいる。 ある日、何年も帰ってこなかった次女が東京からもどってくる。母親の認知症にショックを受け、施設に入れることを提案する。
まだら認知症の母親、同居し婚約者や雀荘の客などまわりの協力を得ながらも一人抱え込む覚悟をした長女。そこに何年かぶりで帰省した次女を中心にした物語。気遣われても大丈夫と言ってしまう長女が実は大丈夫じゃないということを妹はわかっていて、しかし日々の認知症のケアを周りが協力してくれているとはいえ既に限界を超えていて。互いに気を遣い合う姉妹だけれど、姉がその本当の気持ちを吐露するあたりが物語のクライマックス。凝り固まっていた姉妹の関係が溶け合っていくようなのです。
決して流行っているとはいえない雀荘の客たちは温かく、しかしぞれぞれ元ボクサーだったり理系のバリバリの研究者だけどキャバクラするかどうか迷っていたり、あるいはもうベテランのキャバ嬢だったりと様々な人々。雀荘にしたおかげで一癖二癖ある普通だったら交わらない人たちが繋がるという利点はあるけれど、物語が必要とする人数に対して少し登場人物が多く感じられるのも事実なのです。
後半のディスカッション。ゲストの永井愛は数々の鋭い指摘。とりわけワタシが共感するのは、かつての権力たる母親が認知症で責任取れない状態になっているところで想いを抱え込んだ妹がそれに向き合うという実に演劇的な状況を使い切れてないことや、プロットを固めて書いた方がいいと思われがちだけれどそれに囚われすぎず、解っていることだけで解らないことを書き進めるのだ、というコメントなのです。
母親を演じた山口智恵はおばちゃん感いっぱいだけれど、時折無垢な可愛らしさを見え隠れさせる見事さなのです。たった半月前に松本で魅力的な芝居を観たばかりの多田香織、妹の役の別の魅力。(誰でも参加できる)打ち上げなどで耳にする、台本はあらかじめ貰うけれど、役者の拘束は当日朝からだけ、というある種の軽さだからこそのキャスティング。もちろん、リーディングとはいえ、短い時間で作り上げる役者の力量の上に成立する企画ではあって、それを楽しむワタシですけれど。
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