【芝居】「リトル・ドラマー・ボーイ」キャラメルボックス
2018.12.1 18:00 [CoRich]
1996年初演の「TWO」をベースにした改訂作を新作として。2日まで120分。八王子市芸術文化会館いちょうホール。そのあと大阪、東京・池袋。右手で触れると怪我や病気治してしまう力への注目が加熱して身を隠し方々を転々としてきた男。今は熊本で結婚し暮らしている。ある日幼馴染みからの電話で、小学校の恩師に癌が見つかり余命宣告を受けたことを知り地元に戻り今は空き家となっている実家だった病院に行くと、見知らぬ男が襲ってくる。殺人代行を名乗る男は同業者の男を捜しているのだという。
手をかざすだけで人の命を救う不思議な力を偶然持ち、世間から身を隠して生きていた男がその力を使うたび自分が弱っていくことを知りながら、目の命を助けたい、という主人公の骨格はそのまま、「TWO」では二人で逃避行を続けることになった恋人は今作では物語の背景としては描かれるものの、本編には現れません。男にとってその超能力の起点となる故郷で何が起こっていたかという過去を下敷きに、故郷に舞い戻った男をめぐる物語を描きます。
昭和に拘る殺人代行の男、というキャラクタは去年のクリスマスツアー「ティアーズライン」に現れたのと同じ登場人物を同じ役者によって演じられます。迫力あるアクションを支える要の一人でコミカルさも含め魅力的であることは間違いなく、ひとつの大きなキャラメルボックスの物語世界のサーガを繋げる一部にはなっているのだけれど、正直に云えば、このキャラクタの印象は、どの物語と組み合わせても強烈すぎてどれも同じ世界観になってしまいそうに感じます。どんな料理にまぜてもカレーになってしまう、みたいな。演じた阿部丈二の代表的な役であることはまちがいなくて、この魅力的な人物はむしろ彼の物語を観たい気もします。おそらくスピンオフ、全編これではほぼ一人芝居なセリフ量になる予感もしますが、それはそれ。
そう、「ティアーズライン」から顕著に感じられるのはアクションの充実で、それをきちんとできる俳優が揃ってきたということだとも思います。この一年のキャラメルボックス、この10年ほどのさまざまな演目やその骨格を組み合わせながら、各地に赴くグリーティングシアターや東京でも小さな空間での会話劇など集大成の試行錯誤でもあったと思います。かつてあったようなサンシャイン1ヶ月超えの時代の勢いともいかず、そのわりにはチケット代はその頃から下がらず変わらないということなど、劇団の骨格と筋肉の大改造を感じられたのも、観続けている私にとっての収穫なのです。
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