【芝居】「ライク・ア・ファーザー」自転車キンクリートSTORE
2018.10.28 14;00 [CoRich]
自転車キンクリート、ワタシは4年振り。120分。31日までOFF OFFシアター。
就活がうまくいかず踏切で飛び込もうとしていた初老の男を中年の男女が止めた。お礼にとさそわれたのは酒屋のバックヤード。近所の顔見知りが集まり角打ちしている場所だった。酒屋の夫婦はまもなく子供が生まれるため、妻の幼なじみが店を手伝っている。近所のお茶屋の息子はアラフォー独身だが、その幼なじみの美しさに一目惚れするが、シングルマザーと聞いてショックを受ける。
飛び込みを止めた男女の姿は、飛び込もうとした男以外には見えていないようだ。二人は亡くなっていて漂っているといい、普段は見えないが触ると見えるようになるのだという。
恋と仕事と結婚に思い悩む30代という感じだったじてキンが描く物語は初老のくたびれたオジサンだったり、親に結婚をせっつかれる中年男だったりを軸にしながらも、これから生まれてくる子供を待ち不安と親になりきれない男女と、年齢を重ねてからのぎこちない親と子の関係を並べて見せる、実は親子をめぐるさまざまな物語。中年の男女の「幽霊的なもの」というファンタジー要素が物語全体を包みながらも、それぞれの不器用さが時に滑稽にだったり、時に情愛の深さを王道に描くようだったりと、ああなるほど観客も出演者も間違いなく年齢を重ねているのだ、ということを実感する物語になっているのです。
シングルマザーの女は少し不器用でクールな感じ、ギャンブル狂いだった父親のことを許せないままにずっと生きてきたけれど、いじめられっ子で一人見ていたアニメの「魔法の壺」を探していたのだということが見えてきたり、シングルマザーが事故にあうところをその見えなくなった父親に助けられたりと父親に対して許していくのです。あるいはちょっとがさつな独身男は同居する母親が疎ましく感じるけれど、突然倒れ、やはり大切な人なのだと再発見するなど、年齢を重ねたら重ねたなりに親の見え方が変わってくる、ということ。それは決して他人事ではなく自分に迫っていることなのだけれど、まだそれでも実感を伴って、というところまでは育ってないアタシなのですが、それでもずっとそういうことに近い歳になったなぁと感慨も深いのです。
この世のものではない中年の女を演じた歌川椎子はコミカルで楽しく、人に見えないのをいいことにビールケース押さえつけたりハマったりする細かいイタズラが楽しい。中年の男を演じた樋渡真司もコミカルにスタートしちょっといい加減なおやじっぽさの絶妙、終幕に向かってしっかりと背負う父親の物語。踏切に飛び込もうとする男を演じた久松信美はどこまでもいい人、ちょっと巻き込まれる感じも楽しく、「休むに似たり」ついつい思い出しちゃうワタシです。この三人いるとジテきんだなぁとほんとうに嬉しくて。アラフォーの独身男を演じた三浦剛はちょっとがさつだけど親思い不器用さ勝る造型の細やかさ。シングルマザーを演じた内田亜希子は一目惚れされる美しさの説得力と凛とした格好良さ。酒屋の夫婦を演じた渡邉とかげ、花戸祐介はクロムモリブデンの役者ですが、ラブラブな普通に可愛らしい夫婦、そこにちょっと差し入れられる影もちゃんと。
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