【芝居】「魔法少女的ゾンビ」ムシラセ
2018.11.11 18:00 [CoRich]
ムシラセ、久々の本公演。11日までシアターミラクル。70分。オーディションによって選抜され、代替わりしていくアイドルのオーディション。とりわけ伝説として語られる初代の人気は今でも凄かったが、引退後は表舞台に出てこなくなった。製薬会社が主催し、薬によってアイドルに変身する、というアイドルで、オーディション会場に集まる人々はぱっとしない。
伝説の初代の存在と、薬によって変身するアイドルということが徐々に語られる物語。オーディション会場に集まる人々が一癖も二癖も。可愛いけれど地味な女だったり、どう考えてもおばさんな女が経済的な理由と子供に見せたくて応募しているということだったり、ぶりぶりなアイドルっぽい女が実は魔女だと中学生になって騙されて引きこもった過去、あるいは恰幅のいいオジサンだったりと、ちょっとアイドルに見えない人々のあれやこれやの序盤。それぞれに背負っている物語はあるのだけれど、正直にいえばちょっとキャラクタが強いというかいかにも作られた感じではあります。それは「いろんな人々がいる」ということを描くことが重要な場面だということは後半でわかってくるのです。
序盤ではあまり現れないスタッフは冷たいを通り越して感情を無にしているとおもうほど。 中盤から後半にかけて、台詞で明確というわけではないけれど、彼女こそが伝説の初代のアイドルで、表舞台から姿を消していていること、薬によってアイドルになるのだという背景、それはもしかしたら死という結末や抜け殻のようになってしまうかもしれないという怖さ。フィクションなのだけれど、現実に私たちが目にしているアイドルのありかたの残酷さの映し鏡のようでもあるのです。
初代アイドルがスタッフになっているのはその辛さを繰り返させないためだというダークさと、オジサンでもアイドルになるという過ぎるポジティブさという骨格が力強い構造なのです。 オーディションが終わった後日談的な終幕近く、まあわりと速い段階で判るオチではあるけれど、出落ち感含めてそういう風体の役者の圧倒的な力で寄り切った感はあります。演じた山森信太郎の説得力と可愛らしさのギャップの面白さが際立つのです。スタッフを演じた渡辺実希はこういう冷たさが似合う役どころ、アイドルだった姿も透けて見えるのもまた説得力。
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