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2018.11.27

【芝居】「さよならはここにいる」こゆび侍

2018.11.16 12:30 [CoRich]

こゆび侍の新作。18日まで王子小劇場。120分。 町全体で引っ越しを決めて期限がまもなく。ニュータウンへの移住が進みつつあるけれど移住の有無すら決めていない女。 昔からの書道教室だった家で高校生の頃はあまり書道は好きじゃなかったが母親が姿を消し娘が跡を継いで教えて年を重ねてきた。教え子の一人の男子高校生が事故に遭い葬儀のあと戻ってくるとその教え子が居る。この家からは出られないのだという。

消えていく町にある書道教室の部屋を定点にして描きます。子供の頃からずっと住んだ家、離婚して女手ひとつで育ててくれたけれど結局は底に一人残され、恋人もいないままに歳を重ねて来た女の10代、30代、40代を行きつ戻りつしながら描きます。町は消え、この家は出ていかなければいけないのに、この場所を離れがたい強い気持ち。この家を離れがたい気持ちは30代の時に通ってきていた今は亡き教え子の存在。亡くなったあとしばらくこの家にふいに現れ二人だけですごした緩やかな時間、現れなくなった今も忘れられない女の気持ち。

幽霊が現れるファンタジーという描き方ではあるけれど、彼女にとってだけ、ココロの様々な要因からそう見えたかも知れない、と言う程度には抑えが効いていて、ファンタジーに頼り切った物語ではなくて、むしろ主人公の女の子の動きを細やかに描くのです。

ネタバレかも

海外に移住した幼なじみに久々に再会する、という終幕。しかも彼女が生計を立ててきた書道のために、というのもちょっといい。離れがたいというよりは囚われとなっていた家から、そしてこの土地から離れ踏み出す第一歩なのです。

正直にいえば、ニュータウンという響きがちょっとレトロな印象ではあって、ワタシにとっては時間軸にちょっと混乱するけれど、ワタシだけの問題かもしれません。物語では移住の理由が語られないのも、物語の軸には関係ないこととはいえ、ちょっと気になるワタシです。この場所が消えるという設定のためだけに働くのはちょっと勿体ない気もします。全員を動かすというのは相当なことのはずで、前向きなのか後ろ向きなのか分からないけれど、その出来事が人々の気持ちにどう影を落とすのかみたいな補助線が欲しくなっちゃうワタシなのです。

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