【芝居】「贋作 桜の森の満開の下」NODA MAP
2018.11.16 19:00 [CoRich]
坂口安吾の「桜の森の満開の下」「夜長姫と耳男」を下敷きに夢の遊眠社が上演、再演や新国立劇場での上演、歌舞伎での上演を経ての五回目の上演。ワタシは初見です。
鬼と人間が明確に別れていた時代。飛騨の王は三人の飛騨の匠を捕らえ、二人の娘のためにミロクボサツを掘るように命じるが、三人は身分を偽った別の男たちだった。
謀反が起こり飛騨を倒し彫り上げた化け物によって戦乱が収まる。大仏開眼によって国を治めることを願う新たな王だったが、自分もまた謀反を起こされることを恐れ周囲を鬼だと名指しして迫害を繰り返す。
力を手にしてのしあがった王、その時代の変化の中で持ちあげられ迫害される男。それを翻弄する妖しい魅力を持つ女の存在。迫害される側としての「鬼」が権力の構造の中で生まれていく過程と、それとは別に人の心に巣くう残虐さの表出としての「鬼」の存在が対比されるように描かれるのです。
翻弄される側の男・耳男を演じた妻夫木聡は翻弄されるある種の弱さとはいえるけれど、このパワフルなキャストの中での存在感は惜しい。翻弄する姫を演じた深津絵里は天真爛漫と残虐さのアンバランス、人の中に巣くう鬼をしっかりと体現。謀反で勝ち昇った王を演じた天海祐希は迫力と身のこなしの美しさ。もう一人の職人を演じた古田新太は時にコミカルさもきっちりと。
為政者が自分のために歴史を書き換えることに躊躇が無いことはもしかしたら初演では歴史の一ページという反省だけど、それを現実のものとして目の当たりにしてしまった私もまた、現実と地続きだということの絶望を感じるのです。
いくつもの美しいシーン。大きな木に大量の桜吹雪、あるいは長いテープ状のものを自在に伸縮させてフレームを切り取るような効果を出したりも印象深い。舞台前面にしつらえられたスロープを上ってくる役者、なるほど「地面の下」に眠るものたちが再びこの世に現れて物語を語るよう。
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