【芝居】「咲き誇れ」トローチ
2018.9.24 14:00 [CoRich]
110分。30日までRED/TEATER。
閉店するライブバー。
野球選手を辞めて地元の電気工事会社で働いている男、その会社の社長は常連で、娘はここでアルバイトしている。事故で亡くなった社員の妻もここでアルバイトしているが、夫が着ていた作業着を毎日着て居て、元野球選手のせいで事故に巻き込まれたと思っている。
離婚し地元に戻ってきた若くない女が店に通ってきている。大雨が降る最終日、元野球選手を取材したいとライターが訪ねてくる。
生活は続いているけれど経済的には下降線という地方都市、閉店間近のライブバー。プロ野球選手になったり結婚したりでこの町をでたけれど、どうにもならず半ば嫌々戻ってきた人々、ずっとここで暮らしてきた人々、ここを出た人とここを出て行こうと考えている人と。
物語の軸となるのは野球選手で、地元出身で応援する人も居るけれど、現役時代から札付きだったり、仕事も熱心に取り組むわけでもなく、少し会話するだけで誰もがこれはダメだと虚勢を見抜かれるよう。地元の有名人ではあるけれど、その扱いにちょっと困っていて、目を覚まして変わることを辛抱強く待ってるひとがいても、基本的には悪態をついて一貫してヒールでありつづけます。そのあげくに捨てぜりふを残すように出て行き、あまりにあっけない終幕だけれど、若いうちに成功を収めてそのあとの人生がぱっとしないまま座りのわるいまま生き続けなければならないことの辛さが滲むのです。
対となるように描かれるのは、もう一人地元を出て結婚し別れて出戻ってきた女。序盤から酔いつぶれ、濃い化粧で迷惑顧みず連日店に入り浸る女なのです。有名人とか使い物にならないというわけではないのですが、柔らかくはあってもちょっと虚勢があって、地元の側が扱いに困るような感じもまたもう一人の生きづらいひとなのです。
地元に居続ければいいかというと、それもまたそうでもなくて。ちょっとくすぶるように地元で地道に生きる人もいる反面、人なつっこいいい人だと思っていたのにカジュアルに女を襲ったりする地獄絵図と隣り合わせだったり。あるいは何か事件があって明確に嫌ったり避けたりしたいのに、コミュニティがそもそも小さいために、顔を合わせないわけにはいかないというのも地方都市の一つの真実なのです。
それぞれ出て行って夢破れて戻れる場所としての地元ともいえるけれど、そんなことでもないと戻らない場所という側面でもあって、それはわりと低く響くメッセージになっています。
野球選手を演じた東地宏樹は虚勢を張って生きる男のきまりのわるさ★を造形。地元に出戻ってきた女を演じた小林さやかは若くなくなってるのにイタいはしゃぎっぷりも見事に、これもまた女の虚勢のありかた。野球選手に違和感を抱えて生きている女を演じた増子倭文江は、愛想なく「生活」している女の造形のリアルさ。
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