【芝居】「ブラック・ボックス・デストロイ」れんげでごはん
2018.9.30 10:00 [CoRich]
地元劇団の新作。上土ふれあいホール。60分。
美術館で常連の女性客が禁止されている美術品の撮影をこっそりしている。常連だが、今日が最後で名残惜しく、やむにやまれない気持ちのようだ。 現れた3人の男は、自主映画を撮影賞としているが、役者の手配や撮影許可など行き違いでほとんどやっていないが、3人で集まれる日が今日だけで、無理矢理今日中に撮影を終わらせたいと考えている。常連の女性客を見かけた3人は映画への出演を依頼する。
美術館で無許可の撮影を強行しようとする男3人、巻き込まれる女。男たちはそれぞれの個性バラバラだが仲は良さそうに見える。いろいろ抜けているが強気でお気楽でポジティブな男だったり、人と日常会話をするのが苦手で決められた台詞を喋るのがラク、というより何もかも決めて貰いそれに従うのがラクだと考える男など、一癖も二癖も。巻き込まれる女の方は実家を出ての一人暮らしをしていたけれど、親に実家に連れ戻されることが決まっての最後の日。
劇中で撮影しようとしている映画は抽象的で不思議な雰囲気を纏うけれど、登場人物の気持ちにシンクロするような話なのです。たとえば女は自由だった一人暮らしが終わることの強い不満、それに抗えないことの自分に対する失望感。気弱そうな男は何事も親や友人に決めて貰いたい、自分で決めたくないという気持ち。物語の後半はこの二人の登場人物を写すかのように進みます。
逃げてきた男二人が箱を開ける、大きな箱出てきた女と、箱を開けた一人以外の全ての人間の時間が止まってしまった世界。再び時間を動かすには箱の中にだれか一人を入れて再び箱を閉じるしかない、という状況。 折角出てきた女は断固としてこの箱の中には戻りたくない、ということをシナリオを曲げてまで主張して。 動いている男が入るか、あるいは今は時間が止まっている先輩を箱の中に入れたらいいか、という決断。どちらが入ればいいかを人には決めて貰えないというシチュエーション。 折角得た自由をもう手放したくない女の気持ち、あるいはそれまで自分では何一つ決めてこなかった男の初めての決断、という映画の中の二人の人物の成長の物語はそのまま、その映画を演じている二人の背景に重なり合うのです。それはマトリョーシカというか万華鏡というか、入れ子になった構造が美しいのです。 不思議な雰囲気の話だけれど、その実、人物のシンプルな気持ちとその成長を切り出したような 箱庭な感じが面白いなと思うのです。
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