【芝居】「中年の歩み『Comings and Goings』」第0楽章
2018.10.20 15:30 [CoRich]
中年を迎えた人々を巡る短編をつないだ4編。80分。21日までSPACE EDGE。
電車に飛び込もうとした女を止めたのは30年ぶりの女友達。幼なじみで仲がよかったが、下校途中で男にレイプされていたことを止められなかったことを悔やんでいる「いくよ。くるよ。」。 温泉地のホテルの一室。女が倒れていて男が焦って電話する。電話の相手が部屋にやってきて、それは自殺を止められた女だった。男は先生と呼ばれ、女は委員長と呼ばれ、二人とも怪しげなセミナーの主宰で呼ばれた女が両方を追いかけていて。「ニュー松島」。 女が長く別居している夫。何度も離婚を望んでいた女だが男はのらりくらりと向き合わない。勝手に会社をやめ借金ばかりで暮らしている。AIを作って、妻が手に入れたいものを入れられるようにしたいと思い続けて。しかし妻は帰ることに決めるが、そとは大雨と激しい雷で「クドゥ」。 30年が経ち内戦などがあって荒れ果てた町。一人で暮らしている老女。カップヌードルを一人ですする生活は悪くないが、一緒にいた人々はみな居なくなってしまった「シチリア」。
一人の中年女の幼なじみと心のよりどころとなる何人か、そして老後の一人、という時代を通して描く物語。何かの傷があったり、怪しげなスピリチュアルにはまりこんだりと、もしかしたら中年にさしかかり年齢を重ね独りになるかもしれないという恐怖と、過去にあったショックを受けた出来事を繰り返し思い出すのは、暮らしを重ね微妙な年齢にさしかかる女性たちにとって(もしかしたら男性でも)あるある、という話題をぎゅっと詰め込んだ物語の数々。作家の実感なのかはともかく切実に描かれた物語の数々は誰にでもどれか一つはフックしそうなパーツでもあるのです。
中年という枠組みとはいえイマドキの感覚からすると昭和な香りすらするぐらいに枯れすぎてるという感じですが、コミカルでご愛嬌な感じではあります。もっとも、それもまた肉体の元気さと内側の自分の心持ちの差、ということなのかもしれません。
そういう生々しさいっぱいな話だったりするけれど終盤に向かって時間を超えて再開するというファンタジーがくるりと全体を包み込むよう(このあたりの選曲がSF好きにはたまらない)。「芝居屋坂道ストア」の瑞々しくファンタジーな雰囲気はしっかりと残り、ロマンティックで素敵なのです。
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