【芝居】「スマートコミュニティアンドメンタルヘルスケア」ホエイ
2018.8.25 18:00 [CoRich]
2014年初演作を再演。27日までアゴラ劇場。90分。
複式学級の中学校の教室、教師は中国かぶれ、中国にくれてやりましょう、国歌国旗反対、朝日新聞最高、政府最低、でも校長の失踪は隠蔽している。
教室ではオカルトめいた遊びが流行っていて、何かが見える、ということを言い出していたり、心の隙間に悪い物が取り憑いていると非難したりしている。
子供と大人の境界、遊びとコミュニティが曖昧に同居する複式学級。中国かぶれな若い女性教師に多少の違和感ありつつも、平穏な日々にみえる、ささいなキッカケが暴発する場面を描きます。 背後霊のような推しがそれぞれにという起点はありふれたごっこ遊びだけれど、そこから見えざるものが見えてしまう、ということが共有されて集団ヒステリーのような状態に。それはやがて一人を貶めるイジメの様相、そこから抜け出す方策を必死で考えるなど、まだまだ子供に思える中学生でもそれぞれの立場を必死で守ろうとするコミュニティの萌芽があるのです。
お化けのようなものがみえる、ということが実際に見えているのか、それともある種の同調圧力によってそう云っているだけなのかは台詞だけではわからないけれど、すくなくともこの集団においてはそれが真実として共有され、反論できない状態に。大人と子供の境界たる中学生の未分化さだといえばそうだけど、実際のところ私たちの日常に地続きに感じるワタシです。シーソーゲームよろしく、そっちに付くべきといえばあっというまにバランスが変化すること、残った一人を叩きのめすこと。そこから逃れることの難しさもまるで私たちの写し鏡のように感じるのです。
そういう集団ヒステリーのような危うさを見かけた教師、逆に子供たちの作り出した、「悪の子供」と「心の透き間」という物語に乗っかるのです。心を無くせば対抗できる、とあっさり子供たちを掌握して、催眠術やブレーメンの笛吹よろしく、心を操るのです。序盤では中国かぶれという半笑いに造型されたコミカルなものが、全員に行き渡ってしまう、そのスピードの速さを描く説得力なのです。
コミカルで荒唐無稽な物語と笑うのは簡単だけれど、あちらとこちらの両極端になりがちなわたしたちは、この女性教師のような扇動に、いつ乗ってしまうかもしれない、という恐怖にふるえるのです。
初演の記憶は相変わらず曖昧なワタシです。終演後にロビーで耳にしたのは、終幕の終わり方の変化。初演では、すんでの所で止まった暴走が再演では止まらず、より救いの無い物語に変化したようです。
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