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2018.07.30

【芝居】「土砂降りボードビル」TCアルプ

2018.7.16 14:00 [CoRich]

小さな物語を大道芸風だったりとつないでいく80分。22日まで松本・mm(ミリメートル)。そのあと上田公演は10月。

古い商店をリノベというよりスケルトンにした小さな空間での長期間公演。穴の中から役者たちが飛び出してくるようなオープニングに引き続いて、2人ないし4人程度で演じられる小さな物語はコミカルだったりSF風味だったり、切ない話などバラエティにあふれています。軽快なボードビル、切ない物語があるにせよ、祝祭感がたっぷり。今回の公演のセットリストということになるのでしょうが、おそらくは公演によって、入れ替えていくレパートリーを数多くストックしてるんじゃないかと想像します。

少々ネタバレチックではありますが。

娘が勤める銀行に若い頃の父親が訪ねて来るはなし、若い頃のチンピラな父親は子供ができてまっとうな仕事をしたいからと金を借りに来るワンアイディア。父親はまっとうに育った娘だと云うことをわかっているけれど、娘は厳しく育てられ、父親が若い頃にそんなだったなんて知らない、という非対称な感じがうまい隠し味。チンピラ風情なのに娘への愛情がめいっぱいという造形が現実のヤンキー気質そのものだったりして、やけに説得力を生むのです。

歌を終わらせるメロディーの大発明は、まあ無茶ぶりっぽいけれどあらゆるものを終わらせるワンアイディア。

亡き夫の弟子が妻の面倒をみている話は、よろめきドラマかと思いきや、学者である弟子が地球が明日消えることを告白してさて、という感じ。感謝はすれど愛情には結びつかない妻の想いと、片思いにすぎる男のすれ違い、しかし表だっては愛情も断りも云わないすれ違いの楽しさ。

麦わら帽子の男が排泄は無駄ではないかと力説する話、みんなよりは一段上のステージにいると豪語するけれどどうにもそうは思えない、むしろヤバい人で、ちょっとそれを気の毒に思ったり微妙に下に見たりする気持ち、駅でちょっと騒がしい人を見たときのような気まずさがポイント。

ケーブルテレビを売り込みに来る男と断る男の話、あの手この手、時には取っ組み合いになりながらケーブルテレビがあれば夢の生活をと売り込むけれどけんもほろろ。テレビそのものはジャンキーなほど好きっぽいし、それが映画の一場面になりきるようにスターウォーズよろしくチャンバラになり、ジャックインされる感じが退廃的なサイバーパンクっぽく妙にかっこいい。

すべてを知っている男ホラッチョは、カードを引かせり思い浮かばせたりして組み合わせた無関係な単語のつなげて、小話っぽく無理矢理こじつけながらもオチを付ける無茶ぶりトークは、ハプニング性の楽しさ。

ストリップ劇場の楽屋に逃げ込んだ怪盗をストリッパーが匿う話は、ちょっとした駆け引きの大人の会話から、雨の日だからという憂鬱さが語らせる過去の子どもの頃の話、何か過去のその人を知った、ということで繋がる瞬間だけど次の刹那に別れるのもまた大人の物語。かっこいい。

口八丁手八丁の男の話は、八本の手の男が恋をして子供が生まれ。カードを巧みに操りラブレターを模して、ちょっとしたマジックも交えた洒落た話。

急な雨降り、困った女に傘さしかける男の話は、そこで恋が始まる、というお決まりかと思いきや、恋の相手は後からやってきた別の男、最初のおとこそっちのけで勝手に話しが進んで行き、なんかありそうな切なさ。

夜道で車に轢かれる瞬間のストップモーション、運転手と轢かれる男の会話、このまま轢いて逃げてしまえ自分は自殺したいと言い出して唆すけれど、その裏側、二人の間の隠れた関係が見えてくる少々ホラーめいた話。

喫茶店で待ち合わせる男女、遅れてやってきた女に対して男、最初は「シャツが突然喋りだし、シャツは着られているんじゃなくて着せているんだと自己主張する」という絵本の話で、男はシャツを着ているんじゃなくて着させられているんだと思い、あらゆる行動が「させられている」と気付いてしまう男。「俺は待っているんじゃない、待たせられている」てな具合だけれど、女を責めているんじゃないくて、その主体と受動の気付きにヒートアップする男なんだけど、責められてると感じる女との言葉をめぐるギャップの楽しさ。役者の訳判らない熱量でまくし立てるというあたりがライブな醍醐味。ワタシこれ好きだわぁ。

かと思えば、化粧室の女三人、鏡に向かって粉をはたいたりというのがリズムになっていく一本はエンタメ。STOMP!(懐かしいね)的な楽しさだけど、ごくコンパクトにやるのもまた楽しい。

チンピラ男三人のたわいもない会話と、親分の雨傘係でずっと横に控える男の一人語りは対比的に交互に。これもまた雨の日の物語。雨傘係は親分が町に出かけるのに同行して、ピアノの音に、その窓辺の女に恋をして、どうしても弾いて欲しい曲のレコードをプレゼントするがあいにくの雨でレコードをぬらすまいと普段は自分ではささない傘を差したがために。もっともそのレコードだってそもそも、という切なさ。

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