【芝居】「日本文学盛衰史」青年団
2018.7.8 18:00 [CoRich]
四人の文学者(北村透谷・正岡子規・二葉亭四迷・夏目漱石)の通夜、葬式。遺族や若い文学者が参列している。
明治後期から大正にかけて、戦争に至る国の礎を作った時代、文学もその一部を担ったということを起点にし、四人の文学者の葬儀に集った文学者たちという体裁で物語を進めます。 原作となった同名の書籍(まだ読み終わってないけれど)は、現代の視点を巧みに織り交ぜながら文学者たちの文学との格闘を描くという想像力にあふれたパロディで、描いてるいくつかの断片は同じだけれど、見え方の風景はずいぶん異なります。が、敬意に裏打ちされた物語はどちらも確かに通底するのです。
当日パンフで作家は国で共通の言葉を持たなければならないという時代と文学の関係を背景として説明して始めます。物語全体から俯瞰すると、人は文学で死ねるかという序盤の問いかけは、牧歌的に感じられるのです。 物語は進み、人間の内面を表現する手段を手に入れた人々が内面を共有し広がり、それは大逆事件の引き金にもなって、その力が文学にあることを国が気づいて国民を怖がる時代への変遷を描いてみせる巧さ。
一方でその広がりは、貧乏人は文学を読めるようになるのか、という問いかけから、ベストセラーが人々に読まれるバブルを経て、携帯小説が広がり、人工知能が完璧な文学作品を作り出しベストセラーとなるがその完璧故にその後には誰も文学を読まない時代が来るという未来へ。しかし、人工知能が読む小説、という流れはまた、人間が文学を手に入れてきた時代をなぞるようでもあって、少しの希望を見せるのです。
もっとも、背骨はずいぶんの硬派に思うけれど、語り口は軽快でコミカルなのです。それぞれの時代の文学者たちを少々戯画的、世俗的に人間くさく描きながら、そこにチェルフィッチュ風の現代口語演劇(で演じられる「おおつごもり」が凄い)、スズキメソッドとか、あるいは朝日舞台芸術賞を8年でをすぐ休止しちゃうこと、あるいは蜷川幸雄から相撲協会、はては LINEスタンプやTwitter、#MeTooムーブメントなど、文学と世間とコミュニケーションにまつわるコネタを現代のものも巧妙に織り交ぜながら警戒に、時に爆笑を生みながら描くのです。 かみ砕いた軽い語り口、それにしても文学と国家、文学と戦争、あるいは文学と私たちという視点を盛衰史として俯瞰して描く今作、再演が実に楽しみなのです。
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