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2018.07.20

【芝居】「nursery」serial number(ex. 風琴工房)

2018.7.1 18:00 [CoRich]

風琴工房改めserial numberでの連続上演の二本目。 前日譚を挟み90分。The Fleming Houseで7日まで。

タブロイド紙の記者が精神病院のスタッフに取材を申し込む。それには応じないが、亡くなった医師に関しての写真があるといい、スタッフに渡す。(前日譚・Secret of nursery)
自ら死を選んだ友人精神科医の患者を引き継ぐためにやってきた精神科医。そこに現れる あどけない天使のような患者だがある瞬間に別人格が現れる。父親からの虐待、年上の男を誘惑したあとの苦痛や殺人の苦痛を背負ってきたのはこの別人格だった。

前の週とはうってかわって、高い天井まで届く大きな棚、立派なデスクやソファなど、重厚で優秀な精神科医師の執務室といった雰囲気。クローズドの初演は赤羽橋近くだったと思うけれど、セレクトショップ地下にある本当に謎めいた地下の一室でそれも魅力的だった場所でした。まったく違う雰囲気だけれど、きちんとした執務の場所の雰囲気を全く違うテイストで細やかに作り出しています。なるほど、この場所で連続上演する、という作演の企み。場が鮮やかに変わっていく驚きと楽しさを久々に感じるのです。終演後にちょっと残って同行者や友人と乾杯してほろ酔いで駅まで向かう道の雰囲気もまた変わる帰路の楽しささえ。

例によって初演の時の記憶が途中まですっぽり抜け落ちていたアタシです。医師の謎めいた死、病院の信用を失墜させるようなスキャンダルを通した謎解き。あくまで純真で幼さすら感じさせる青年はしかし、中盤で現れた成長した青年であるもう一つの人格との対比で描かれます。

嫌なものは何一つ目にしないで生きてきから残っている純真さと、その嫌な部分をすべて背負ってきたがために大人にならざるを得なかったもう一つの人格。わりと早い段階でわかる過去の肉親の殺人ばかりではなく、その治療していたはずの医師が死を迎えることになったきっかけ、それを誘惑によって呼び込んだのが無自覚なイノセントで、それが一つの身体を共有しているということを自覚し押し殺し、誰にもそれを話せない苦しさ。人格が二つあるという経験はないワタシですが、そうなったら、そうだったらという未だ知らないことを想像することを強く後押しする力強いホンなのです。

新たに主治医となった意思を演じた酒巻誉洋の誠実なキャラクタ、亡くなった友人とその妻の為にも滞りなく患者を治療しようとするけれど、翻弄されそうになるパワーゲームの緻密さ。二重の人格を持つ男を演じた田島亮はその純真無垢な感じと大人な別人格のスイッチが切り替わる瞬間のわくわくする感じ。前日譚を演じた二人、作演を兼ねる詩森ろばを役者で拝見するのは珍しく、役者として決して上手いわけではないけれど、演じることでこの物語を舞台を作り出したのだという心意気を見せるよう。ワタシの観た回で記者を演じた杉木隆幸はちょっと粘着質で嫌な人物造型、翌週の期待も高まるのです。

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