【芝居】「焔の命--女優の卵がテロリストになった理由」オフィス上の空プロデュース
2018.5.12 13:00 [CoRich]
13日までエコー劇場。
東京オリンピック直前にある劇団が多発テロを起こした。それから数年、初公判のころ首謀者の一人とされた女優の家族をライターが訪れる。劇団内を扇動したのだという論調一辺倒になっていることに違和感を抱き、取材を始める。
学生劇団の数人で旗揚げをした劇団、作演の力が強く根強いファンがいるものの動員は伸び悩み、公演のたびの赤字を劇団員のアルバイトで補填しているが、自分たちはおもしろいものを作っていると信じており、自分たちの作品に観客たちがついてきていないのだと考えている。
もっと作品を研ぎ澄ますために、一ヶ月にわたり人里離れた別荘で合宿稽古をすることを決める。
小劇場の劇団がなぜテロを決行するに至ったか、その醸成される過程を背景に。「女優の〜」はその中でも地味で口数も少ない女を指していて、彼女の視点でその家族やアルバイト先でのそれぞれの立場を交えてフリーライターの聞き取りという形で描きます。
売れてないが故にアルバイト先では応援はされても、女を切り売りすることを求められたり、あるいは純粋な応援とはいえストーカーもどきがついてまわったり。家族もまた、内定を蹴ってまでアルバイトで芝居を続けていることへの風当たり。全面的に支える恋人は自分から切り離してしまうこと。 いくつかあったはずの帰る場所、それぞれの居心地が悪くなっていくことでその範囲がどんどん狭まっていって、それが合宿稽古という閉鎖された空間で集団が暴走していくこと、程度の差こそあれそこかしこにありそうな、団体のありかたの一つ。
売れない小劇場劇団がそれでも続けていくモチベーションは自分たちはいいものを作っているというある種の盲信。作り出すために信じることは必要なことだけれど、度を超したときに起こる悲劇。近くはオウム真理教から少し昔のあさま山荘まで、暴走した集団の中で起きていること、その中で地味だったはずの女がなぜそこから抜け出せなかったかということ強烈に印象づけられるのは、これが過去の話でも単なるフィクションでもなく、現在進行形でも上からの指示で何でもやってしまう、ということがほんとうに頻発している私たちから地続きに感じられるからなんじゃないかと思うのです。
正直にいえば、物語に対して少々登場人物が多いような気がしないでもありませんが、まあそう大きな問題ではありません。
「女優の卵」を演じた福永マリカ、ちょっとおどおどした口数の少ない女性の役はちょっとめずらしい気がします。その居場所を失いたくないからほとんどニコニコしているという造型、美しいけれど哀しい。看板女優を演じた佑木つぐみの造型がちょっと凄くて、盲信と何かを手に入れたいという強烈な気持ちのちょっと怖い感じすら。
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